プロ野球のオフシーズンを大きく動かすフリーエージェント(FA)。選手が自ら移籍先を選べる制度ですが、権利を取得するまでには一軍の出場選手登録日数に関する条件があり、国内FAと海外FAでは移籍できる範囲も異なります。加えて、国内球団への移籍では年俸ランクに応じて人的補償や金銭補償が発生するため、選手本人の決断だけでなく、獲得球団の編成戦略にも大きな影響を及ぼします。
2026年オフは、日本野球機構(NPB)が10月19日にFA有資格選手名簿を公示し、その後、オリックスの石川亮捕手が追加され、対象者は計105人となりました。広島の森下暢仁、床田寛樹、坂倉将吾、ソフトバンクの周東佑京、西武の髙橋光成ら、注目選手が国内・海外FAの資格を取得しています。ここでは、2026年10月下旬時点の公示情報を基に、取得条件、12球団別の有資格者、残り日数の考え方、補償制度、宣言から移籍までの流れを整理します。
【2026年オフのFA最新情報】有資格者105人と注目選手を整理

NPBは2026年10月19日、フリーエージェント有資格選手名簿を公示しました。当初の公示後、10月21日にオリックスの石川亮捕手が追加され、名簿上の有資格者は計105人に訂正されています。国内FAの新規取得者は22人、海外FAの新規取得者は17人です。
国内FAでは、広島の森下暢仁、床田寛樹、坂倉将吾をはじめ、ロッテの小島和哉、オリックスの宗佑磨、中川圭太、田嶋大樹、ソフトバンクの周東佑京らが新たに資格を取得しました。海外FAでは、DeNAの佐野恵太、巨人の高梨雄平と大城卓三、西武の髙橋光成と外崎修汰、ソフトバンクの上沢直之と近藤健介らが名簿に入っています。
ただし、FA資格の取得は移籍の意思表示ではありません。複数年契約を結んでいる選手であっても資格を取得する場合があり、資格取得者全員が宣言するわけでもありません。実際の移籍動向を読むには、資格の種類、宣言の有無、所属球団との契約状況を分けて確認する必要があります。
また、名簿にはシーズン終了後に引退や戦力外となった選手も含まれています。資格取得者の人数だけで、今オフに移籍市場へ参加する選手の人数を判断することはできません。
2026年のFA宣言期間は、日本シリーズ終了後に始まります。日本シリーズは10月24日に開幕し、最終第7戦は11月1日の予定です。シリーズの終了日によって宣言期限が変わるため、現段階では確定した宣言者や移籍先ではなく、資格取得者と今後の日程を押さえることが先決です。
【国内FA・海外FAの取得条件】145日の登録日数と先発投手特例
FA権取得の基準となるのは、試合に実際に出場した日数や通算出場試合数ではなく、公式戦期間中の一軍「出場選手登録日数」です。NPBのFA制度では、登録日数が145日以上に達したシーズンを1シーズンとして計算します。
そのため、一軍に登録されていて試合に出場しなかった日も、制度上の登録日数として扱われます。一方、二軍登録中や一軍登録抹消中の日は、原則として一軍登録日数に含まれません。
国内FAの取得条件は、入団時の区分によって異なります。2007年以降のドラフトで入団した大学生・社会人出身選手は7シーズン、それ以外の選手は原則8シーズンです。海外FAは原則9シーズンで取得できます。
また、145日に届かなかったシーズンがあっても、その年の登録日数がすべて無駄になるわけではありません。145日に満たないシーズンの登録日数は合算され、合計145日に達すると1シーズンとして計算されます。FA権取得までの残り日数を確認するときは、この端数の扱いが大切です。
国内FAと海外FAの違い
- 国内FA:NPBに所属する他球団との契約交渉が可能になる。
- 海外FA:NPBの他球団に加え、MLBなど海外のプロ野球球団とも契約交渉が可能になる。
- FA権の再取得:FA宣言後にNPB球団と契約した選手は、再び一軍登録145日以上のシーズンを4シーズン重ねると海外FA資格を取得する。
国内FAと海外FAの大きな違いは、移籍先の範囲です。海外FA権を行使して海外球団へ移籍する場合、国内球団間のFA移籍で用いられる人的補償・金銭補償の仕組みは適用されません。一方、国内FA権を行使してNPBの他球団へ移籍する場合は、旧所属球団での年俸ランクに応じて補償が発生することがあります。
「投げ抹消」で登録日数が足りなくなる問題への対策
先発投手は、登板間隔を確保するために一軍登録を抹消し、次の登板に合わせて再登録されることがあります。いわゆる「投げ抹消」です。この運用では、先発として継続的にチームを支えていても、登録抹消中の日数がFA権取得に必要な登録日数に算入されず、取得時期が遅れる場合がありました。
この問題に対応するため、NPBは2024年から先発投手特例を導入しました。先発ローテーション投手について、先発登板の翌日以降6日以内に登録抹消され、抹消日から14日目以内に次の先発登板をした場合、登板間の登録日数が6日あったものとみなして加算する仕組みです。通常の登録日数だけでは拾えない先発投手の稼働実態を考慮した制度といえます。
なお、先発投手特例は、どの投手にも無条件で適用される制度ではありません。球団が先発ローテーション投手と判断していることなど、定められた条件を満たす必要があります。また、故障による登録抹消には別の故障者特例措置があり、一定の条件下で登録日数が最大60日まで加算されます。
【2026年FA有資格者一覧】12球団別の国内FA・海外FA取得状況
以下は、NPBの2026年度有資格者名簿と追加公示を基に整理した球団別一覧です。「★」は2026年に新たに取得した選手を示します。国内FA権と海外FA権は別々の区分で、選手によって取得済みの権利が異なります。
名簿の記載を基準にしているため、シーズン終了後に引退・戦力外となった選手には注記を付けています。表に名前があることは、FA宣言や移籍が決定したことを意味しません。
| 球団 | 国内FA権の有資格者 | 海外FA権の有資格者 |
|---|---|---|
| 読売ジャイアンツ | ★増田大輝、中川皓太、吉川尚輝 | ★高梨雄平、★大城卓三、坂本勇人、丸佳浩、小林誠司、田中将大 |
| 東京ヤクルトスワローズ | ★星知弥、★宮本丈、高梨裕稔 | 石川雅規(引退)、中村悠平、山田哲人、石山泰稚、田口麗斗(戦力外)、小川泰弘 |
| 横浜DeNAベイスターズ | 森原康平、神里和毅 | ★京田陽太、★佐野恵太、宮﨑敏郎、山﨑康晃、筒香嘉智、柴田竜拓、戸柱恭孝 |
| 中日ドラゴンズ | ★山本泰寛、★藤嶋健人、★加藤匠馬、★上林誠知、柳裕也、阿部寿樹 | 大島洋平、大野雄大、涌井秀章、高橋周平 |
| 阪神タイガース | ★木浪聖也、★熊谷敬宥、近本光司 | ★坂本誠志郎、★糸原健斗、★植田海、★岩崎優、★伏見寅威、梅野隆太郎、岩貞祐太(引退) |
| 広島東洋カープ | ★床田寛樹、★坂倉将吾、★森下暢仁 | ★秋山翔吾、會澤翼、菊池涼介、堂林翔太、大瀬良大地、野間峻祥、中崎翔太 |
| 北海道日本ハムファイターズ | 玉井大翔 | ★有原航平、宮西尚生、西川遥輝、中島卓也(引退)、加藤貴之 |
| 東北楽天ゴールデンイーグルス | ★前田健太、★太田光、★加治屋蓮、★小深田大翔、田中和基(引退)、酒居知史(戦力外) | 岸孝之、浅村栄斗、辛島航(引退)、鈴木大地 |
| 埼玉西武ライオンズ | 該当者なし | ★髙橋光成、★外崎修汰、栗山巧(引退)、中村剛也、炭谷銀仁朗、源田壮亮 |
| 千葉ロッテマリーンズ | ★小島和哉、藤岡裕大 | ★ソト、唐川侑己(引退)、角中勝也(引退)、益田直也、中村奨吾(戦力外)、岡大海、西野勇士 |
| オリックス・バファローズ | ★宗佑磨、★中川圭太、★田嶋大樹、山岡泰輔、★石川亮 | ★西野真弘(引退)、若月健矢、大城滉二、岩崎翔 |
| 福岡ソフトバンクホークス | ★周東佑京、モイネロ | ★上沢直之、★近藤健介、今宮健太、中村晃(引退)、柳田悠岐、牧原大成 |
特に注目されるのは、国内FA権を取得した広島の森下、床田、坂倉の3選手です。先発投手と捕手というチーム編成上の重要なポジションで複数の選手が資格を得たことから、球団との契約交渉や来季の戦力構想に関心が集まります。ただし、3選手とも資格取得がそのまま宣言を意味するわけではありません。
また、海外FA権を取得した髙橋光成、佐野恵太、近藤健介、上沢直之らについても、権利行使の有無と移籍先の選択は別々に判断する必要があります。海外FA権を保有していても、国内球団への残留や国内移籍を選ぶことは可能です。
【FA権取得までの残り日数】宣言期限・公示・交渉解禁はいつ?
FA権取得までの残り日数は、一軍登録日数を基に計算します。シーズン中は、現在の登録日数と145日までの差を確認することで、今季中に1シーズン分の条件を満たせるかを把握できます。ただし、過去のシーズンで145日に届かなかった登録日数や、故障者特例・先発投手特例の適用状況によって、取得時期は変わります。
2026年は、各球団の公式戦・クライマックスシリーズなどの終了時期に応じて、今季の登録日数の集計が終わっています。日本シリーズ出場選手として登録されても、その日数がFA取得に必要な公式戦期間中の登録日数にそのまま加算されるわけではありません。2026年中に取得条件を満たさなかった選手は、原則として次のシーズンの登録日数を積み重ねていくことになります。
2026年オフのFA宣言から交渉までの流れ
- 日本シリーズ終了:シリーズが終了した日の翌日から、FA宣言期間が始まる。
- FA宣言:土曜・日曜・祝日を除く7日以内に、在籍球団へ権利を行使する意思を伝える。
- 宣言選手の公示:宣言期間の終了後、NPBがFA宣言選手を公示する。
- 契約交渉の解禁:公示の翌日から、旧所属球団を含む各球団と次年度の契約交渉が可能になる。
- 契約・移籍の決定:選手と球団が合意すれば契約締結へ進み、国内移籍の場合は必要に応じて補償手続きが行われる。
NPBが公表した日本シリーズ2026の開催日程では、第4戦が10月28日、第7戦が11月1日の予定です。最短の第4戦でシリーズが終了した場合、FA宣言期限は11月9日ごろ、最終第7戦まで進んだ場合は11月11日ごろになる見込みです。宣言選手の公示と交渉解禁の日程も、シリーズの終了日によって変わります。
FA宣言は、移籍先が決まってから行うものではありません。宣言後に複数球団と交渉するケースもあれば、宣言したうえで旧所属球団に残留するケースもあります。宣言の有無、交渉の開始、契約合意という段階を分けて追うことが、報道を正しく理解するポイントです。
【FAランクと補償制度】人的補償・金銭補償・プロテクトリストの仕組み
国内FA権を行使した選手がNPBの他球団へ移籍する場合、旧所属球団への補償が発生することがあります。補償の有無や内容を決める基準が、FA選手の旧所属球団における年俸ランクです。
年俸ランクは外国人選手を除いた旧所属球団の選手の年俸順位によって決まり、上位1~3位がAランク、4~10位がBランク、11位以下がCランクです。これは選手の実力を直接評価するランキングではなく、あくまで球団内の年俸順位を基にした補償区分です。ランク自体はNPBから公式に公表されるものではないため、報道や推定年俸を使ったランク予想には不確実性があります。
人的補償と金銭補償の違い
初回のFA権行使による国内移籍では、A・Bランクの選手について、旧所属球団が人的補償を求めるかどうかを選択できます。人的補償を求めない場合は金銭のみ、求める場合は選手1人と金銭の組み合わせになります。
- Aランク:金銭のみなら旧年俸の80%、人的補償ありなら選手1人に加えて旧年俸の50%。
- Bランク:金銭のみなら旧年俸の60%、人的補償ありなら選手1人に加えて旧年俸の40%。
- Cランク:人的補償・金銭補償ともに不要。
FA権の再行使による移籍では、金銭補償の割合が変わります。金銭のみの場合はAランクが旧年俸の40%、Bランクが30%。人的補償を伴う場合は、Aランクが旧年俸の25%、Bランクが20%となります。
人的補償で旧所属球団が獲得できる選手は、移籍先球団が提出するプロテクトリストから外れた選手です。通常、リストには28人を登録でき、外国人選手や直近のドラフトで指名された選手なども人的補償の対象外となります。プロテクトリストそのものは公開されないため、報道で見られる「プロテクト予想」は各球団の戦力構成や契約状況などを基にした推測です。
2026年オフは人的補償のルール変更にも注目
2026年は、FA移籍に伴う人的補償の見直しが議論されています。日本野球機構と日本プロ野球選手会は、人的補償の撤廃や代替制度について協議を続けてきました。代替案としてドラフト指名権の譲渡などが取り上げられていますが、2026年8月には今オフからの制度変更は見送られることになり、10月13日時点でも合意には至っていないと報じられました。
したがって、2026年オフの移籍を考える際は、現行の補償制度を基本に理解しておく必要があります。今後、制度改定が正式に決定されれば、人的補償の対象や金銭補償の扱いなどが変わる可能性があります。選手の移籍先だけでなく、制度の変更時期にも注目すべき年です。
【FA宣言する理由と歴代移籍】2026年の動向をどう読むか
選手がFA宣言を検討する理由は、契約条件だけではありません。出場機会や守備位置、起用方針、優勝を目指す環境、チーム内で期待される役割など、競技生活に関わる複数の要素が判断材料になります。海外FA権を持つ選手にとっては、海外リーグへの挑戦も選択肢に入ります。
一方、獲得球団側は、選手の実績や年齢だけでなく、来季の戦力構成、ポジションの補強ポイント、契約年数、補償の負担を総合的に判断します。特にA・Bランクの選手を国内FAで獲得する場合、人的補償で有望な若手を失う可能性もあり、獲得による戦力強化と既存戦力への影響を同時に検討する必要があります。
過去のFA移籍にも、補償制度の違いが表れています。2025年オフには、松本剛が日本ハムから巨人へ移籍し、日本ハムは人的補償ではなく金銭補償を選択しました。一方、桑原将志がDeNAから西武へ移籍した際には、DeNAが人的補償として古市尊を獲得しています。同じFA移籍でも、旧所属球団の判断によって補償の形は異なります。
2026年オフの注目選手についても、名前や実績だけで移籍を予測するのは早計です。例えば、広島の森下、床田、坂倉は球団の戦力構成に関わる重要な選手ですが、権利を取得した事実と宣言の意思は別です。ソフトバンクの周東や近藤、DeNAの佐野、西武の髙橋光成らについても、FA権の種類と実際の選択を切り離して見る必要があります。
また、FA宣言をした後に残留する選択肢もあります。宣言は必ずしも退団を意味せず、旧所属球団と条件を交渉するために権利を行使する場合もあります。報道の見出しで「FA権取得」「FA宣言」「移籍決定」が混同されていると、実際の状況を誤解しやすくなります。
【プロの結論】FA報道は「資格・宣言・契約」の3段階で判断する
FA制度を理解するうえで最も重要なのは、選手の権利取得、FA宣言、移籍先との契約合意を別の出来事として捉えることです。資格を取得した段階では、選手は権利を行使するかどうかを判断していません。宣言後も旧所属球団に残留することがあり、移籍が決まって初めて補償の具体的な手続きが進みます。
移籍報道を読むときは、次の3点を確認すると、憶測と確定情報を区別しやすくなります。
- 権利の種類:国内FAなのか海外FAなのか。取得しただけなのか、実際に宣言したのか。
- 球団間の条件:契約条件や起用方針に加え、A・B・Cランクと補償の有無を確認する。
- 公式発表の段階:報道による意向、FA宣言の公示、契約締結の発表を区別する。
FA制度は、選手が自らのキャリアを選ぶ権利と、球団間の戦力均衡を保つ仕組みの両方から成り立っています。2026年は有資格者の動向に加えて、人的補償制度の見直しも焦点です。移籍先の予想だけでなく、制度上どのような選択肢があり、どの段階まで決まっているのかを確認することが、FA報道を深く理解する近道です。
【プロ野球fa】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:FA権を取得した選手は必ず移籍しますか?
A1:いいえ。FA権は移籍先を選んで契約交渉するための権利です。宣言せずに残留する選手もいれば、宣言後に旧所属球団と再契約する選手もいます。資格取得者の一覧だけでは、移籍する選手を判断できません。
Q2:国内FAと海外FAでは、取得条件や補償制度にどのような違いがありますか?
A2:国内FAは原則8シーズン、2007年以降のドラフトで入団した大学生・社会人出身選手は7シーズン、海外FAは原則9シーズンの登録日数条件で取得します。国内FAによるNPB球団間の移籍ではA・Bランクに補償が発生する場合がありますが、海外FA権を行使して海外球団へ移籍する場合は、国内球団間の人的補償・金銭補償の仕組みは適用されません。
Q3:プロテクトリストやFAランクは公式に公開されますか?
A3:プロテクトリストは公開されず、報道やファンの予想は推測にとどまります。FAランクもNPBが公式に公表するものではなく、旧所属球団の日本人選手の年俸順位を基に推定されます。確定した補償内容は、球団からの発表や信頼できる報道で確認する必要があります。
まとめ:2026年オフのFAは取得条件・補償・正式発表を確認しよう
2026年のプロ野球FA有資格者は、石川亮の追加公示を経て計105人となりました。国内FAと海外FAでは移籍可能な範囲が異なり、取得条件は145日以上の一軍登録を基準とするシーズン数で決まります。先発投手特例は「投げ抹消」による登録日数の不足を補う仕組みで、FA権の取得時期を理解するうえでも欠かせない。
国内FAによる移籍では、A・B・Cの年俸ランクによって補償の有無や内容が変わります。2026年は人的補償制度の見直しも議論されているため、今後の正式発表にも注意が必要です。有資格者の人数だけで移籍を予測せず、宣言、公示、交渉、契約合意という段階を追っていけば、FA市場の動きをより正確に把握できます。
今オフの焦点は、資格を取得した選手がどのようなキャリアを選び、球団がその決断を受けてどのように戦力を組み替えるかです。選手本人の選択と球団の補強戦略、そして補償制度の動向を合わせて見ることで、2027年シーズンの戦力図も見通しやすくなります。