広島東洋カープの2023年ドラフトは、大学球界を代表する右腕・常廣羽也斗の1位指名をはじめ、支配下5人、育成3人の計8選手を獲得した投手中心のドラフトだった。指名から3年が経過した2026年、2位の高太一は中継ぎ投手として一軍で存在感を示す一方、1位の常廣羽也斗は右肘の手術を受けるなど、選手によって歩みに違いが出ている。
日本野球機構(NPB)の公式成績、球団発表、当時のドラフト報道を基に、広島カープの2023年ドラフト指名順位と出身校、各選手の2026年成績・在籍状況、指名方針の狙いを整理する。育成2位から支配下登録を勝ち取った佐藤啓介や、2025年に戦力外通告を受けた赤塚健利など、8人のその後を追うと、このドラフトの成果と課題が見えてくる。
【ドラフト会議の経緯】常廣羽也斗を1位指名した理由とは?

2023年10月26日に開催されたプロ野球ドラフト会議で、広島は青山学院大学の常廣羽也斗を1位指名した。球団はドラフト前の10月13日に指名を公表しており、上位候補の中でも常廣への評価が特に高かったことがうかがえる。
常廣は大分舞鶴高校から青山学院大学へ進んだ右投手。直球とフォークを軸に三振を奪える本格派で、大学時代には先発と抑えの両方を経験した。青山学院大学が2023年の東都大学野球リーグで優勝したシーズンにも貢献し、大学球界を代表する投手として評価を集めていた。
1位指名では楽天も常廣を指名し、広島との2球団競合になった。抽選の結果、新井貴浩監督が交渉権を獲得。指名を公表してまで獲得を目指した右腕を、球団は予定どおり迎えることになった。
当時の報道によると、広島のスカウト部門は常廣について、先発と抑えの両方を任せられる総合力を高く評価していた。新井監督もドラフト後、指名全体について「100点満点」と振り返ったと報じられている。
ただし、ドラフト時点の評価と、プロ入り後の実績は分けて考える必要がある。大学時代に示した能力をプロの一軍で発揮できるか、故障を乗り越えて継続的に登板できるかが、上位指名選手の評価を左右するからだ。
【指名結果一覧】支配下5人・育成3人の出身校と2026年の状況
NPB公式の2023年ドラフト選択選手一覧によると、広島の支配下指名は5人、育成指名は3人。投手6人、内野手2人という構成で、大学生投手を中心に即戦力候補を確保しながら、高校生や育成選手にも将来の成長を期待する指名だった。
| 指名順位 | 選手名 | 守備位置 | 指名時の所属 | 2026年時点の状況 |
|---|---|---|---|---|
| 支配下1位 | 常廣羽也斗 | 投手 | 青山学院大学 | 一軍7試合、防御率4.50。10月に右肘手術 |
| 支配下2位 | 高太一 | 投手 | 大阪商業大学 | 一軍56試合、3勝2敗、24ホールド、防御率1.90 |
| 支配下3位 | 滝田一希 | 投手 | 星槎道都大学 | 2026年一軍登板なし。過去2年は一軍登板経験あり |
| 支配下4位 | 仲田侑仁 | 内野手 | 沖縄尚学高校 | ファーム88試合、打率.238、4本塁打 |
| 支配下5位 | 赤塚健利 | 投手 | 中京学院大学 | 2025年10月に戦力外通告 |
| 育成1位 | 杉田健 | 投手 | 日本大学国際関係学部 | 2026年7月21日に支配下登録。一軍5試合、防御率1.59 |
| 育成2位 | 佐藤啓介 | 内野手 | 静岡大学 | 2024年に支配下登録。2026年は一軍70試合に出場 |
| 育成3位 | 杉原望来 | 投手 | 京都国際高校 | 2026年10月26日に自由契約の通知 |
指名結果を俯瞰すると、支配下の上位3人を大学生投手に充て、4位に高校生内野手、5位に大学生投手を配置している。育成でも投手2人と内野手1人を指名した。
ここで押さえておきたいのは、指名順位がそのまま将来の活躍順になるわけではないことだ。育成2位の佐藤啓介が支配下登録を勝ち取り、2026年には一軍70試合に出場した一方、上位指名の常廣は故障への対応が課題になっている。ドラフトの成果を測るには、順位だけでなく、各選手がどの役割を獲得したかを見る必要がある。
【2026年一軍成績】常廣羽也斗・高太一・滝田一希の現在地
2026年シーズン終了時点のNPB公式年度別成績を見ると、支配下指名の投手3人は異なる状況にある。高太一が救援投手として一軍の役割を確立した一方、常廣羽也斗は登板数が限られ、滝田一希は一軍登板の機会を得られなかった。
常廣羽也斗:期待の1位指名は右肘手術からの再起が焦点
常廣の2026年一軍成績は、7試合登板、0勝0敗、防御率4.50、投球回8回、奪三振6。登板機会が限られ、1位指名時に期待された先発ローテーションの柱という役割を確立するには至っていない。
加えて、球団発表を受けた2026年10月3日付の日刊スポーツ報道によると、常廣は10月2日に右肘頭骨棘障害に対する骨棘切除術を受けた。今後はリハビリを経て、投球を再開できる状態まで回復することが課題になる。
2025年は7試合登板で2勝4敗、防御率7.96だった。2024年のプロ初登板シーズンは2試合で1勝0敗、防御率2.45。短い期間の数字だけで能力を判断することはできないが、2025年以降は安定した一軍成績を残せていない。
常廣の評価で重要なのは、単年の防御率だけでなく、健康状態、登板間隔、投球回数、先発として試合を組み立てる能力を合わせて見ることだ。ドラフト1位という肩書きは期待の大きさを示すが、今後の評価は復帰後の実戦内容によって変わってくる。
高太一:2026年は56試合登板、防御率1.90の救援戦力に
2023年ドラフトで最も明確な一軍での成果を残した選手の一人が、2位指名の高太一だ。2026年は56試合に登板し、3勝2敗、24ホールド、防御率1.90を記録した。52イニングを投げて53奪三振、WHIPは1.08だった。
高は大阪商業大学出身の左投手。プロ入り当初は先発候補としても期待され、2025年には8試合に先発して45回1/3を投げ、防御率2.58、3勝2敗という成績を残した。2026年には役割が救援中心に変わり、登板数とホールド数を伸ばしている。
先発として一定の投球回を消化した経験を持ちながら、救援投手としても結果を出した点は評価材料だ。特に、防御率1.90と24ホールドという数字は、勝ち試合の中盤以降を任せられる投手としての価値を示している。
もっとも、56試合に登板した翌年以降も同じパフォーマンスを維持できるかは、今後の注目点となる。登板数だけではなく、連投への対応、制球の安定性、失点につながる四球を抑えられるかが、継続的な評価を左右する。
滝田一希:一軍経験を次の段階につなげられるか
3位指名の滝田一希は、星槎道都大学出身の左腕。2024年に一軍初登板を果たし、1試合で1勝0敗、防御率2.25を記録した。2025年は7試合に登板し、8回1/3で防御率2.16。通算では一軍8試合、1勝0敗、防御率2.19となっている。
2026年は一軍公式戦の登板がなかった。過去の登板成績は悪くないものの、投球回数が少なく、継続的に一軍で投げるための実績はまだ十分ではない。
滝田の今後を判断する際には、二軍での登板数だけでなく、先発・救援のどちらで起用されるのか、イニングを重ねても球威や制球を維持できるか、一軍昇格後に再現性のある投球ができるかを確認したい。
【野手・育成組の現在地】仲田侑仁、佐藤啓介、杉田健らの成績
2023年ドラフトを振り返るうえでは、支配下の野手2人と育成3人の動向も欠かせない。特に佐藤啓介の支配下登録と、杉田健の2026年シーズン中の支配下昇格は、育成指名から一軍戦力へ進む道筋を示す出来事となった。
仲田侑仁:2026年ファーム88試合で打率.238
支配下4位の仲田侑仁は、沖縄尚学高校出身の右打ち内野手。187センチ、103キロの体格を生かした打撃が期待される長距離打者候補だ。
NPBの2026年度ファーム・リーグ西地区の個人成績では、仲田は88試合に出場し、315打数75安打、打率.238、4本塁打、38打点を記録した。一軍公式戦では2024年に1試合出場した経験があるものの、2026年は一軍での出場がなかった。
若い内野手の成長を評価するうえでは、打率だけでなく、長打率、四球、三振、守備位置での安定性も重要だ。仲田の場合、2026年はファームでまとまった打席数を得たことが収穫である一方、出塁率.265、長打率.330という数字からは、打撃面でさらに伸ばす余地がうかがえる。
将来性を見極める要点は、長打力を維持しながら出塁能力を高められるか、そして一軍の投手に対応できる打撃を身につけられるかだ。高校生野手として指名された選手であり、投手陣の即戦力化とは異なる時間軸で評価する必要がある。
佐藤啓介:育成2位から支配下登録、2026年は一軍70試合
佐藤啓介は静岡大学出身の内野手で、育成ドラフト2位指名。2024年6月7日に育成選手から支配下選手へ移行した。大学からの育成指名でも、打撃でアピールを続ければ一軍への道が開けることを示した選手だ。
2026年の一軍成績は70試合出場、150打席、138打数28安打、打率.203、5本塁打、16打点、出塁率.260。2024年の7試合、2025年の5試合から出場機会を大きく増やし、プロでの経験を積んだ。
打率だけを見ると課題は残るが、一軍で70試合に出場し、5本塁打を記録したことは、育成指名からの成長を測るうえで意味がある。今後は出塁率の改善、打席での対応力、守備面での信頼を積み重ね、継続的に起用される選手になれるかが焦点となる。
佐藤の事例は、ドラフトの価値が指名順位だけでは決まらないことを端的に示している。育成指名であっても、支配下登録を経て一軍で出場機会を得られれば、球団にとって大きな成果となる。
杉田健:2026年7月に支配下登録を勝ち取る
育成1位の杉田健は、日本大学国際関係学部出身の右投手。2026年7月21日、背番号120から50へ変更され、支配下選手に登録された。NPBの公示にも、育成選手から支配下選手への移行が記録されている。
2026年の一軍成績は5試合登板、5回2/3、0勝0敗、防御率1.59、6奪三振。登板数はまだ少ないものの、一軍で失点を抑えたことは次につながる材料だ。
育成から支配下への昇格は、選手が球団の戦力構想に入ったことを示す重要な節目となる。ただし、支配下登録そのものが一軍定着を保証するわけではない。今後は登板機会を増やし、より多くの打者を相手にしても安定した投球を続けられるかが問われる。
赤塚健利:2025年に戦力外通告
支配下5位の赤塚健利は、中京学院大学出身の右投手。長身を生かした投球が期待されて指名されたが、2025年10月1日、広島から来季の契約を結ばない旨の通告を受けた。日刊スポーツなどの当時の報道でも、戦力外通告を受けた選手の一人として伝えられている。
赤塚のケースは、支配下指名で入団した選手であっても、プロでの実績を積み上げる難しさを示している。ドラフト5位という順位だけで成功・失敗を断定するのではなく、入団後にどの程度の出場機会を得て、成長を示せたかという視点が必要だ。
2026年時点では広島の所属選手ではない。退団後の進路については、確定した所属先の情報と、現役続行を目指す段階の情報を区別して扱う必要がある。
杉原望来:2026年10月26日に自由契約の通知
育成3位の杉原望来は、京都国際高校出身の左投手。NPB公式の年度別成績では、一軍公式戦への出場機会は記録されていない。
2026年10月26日、広島は球団公式サイトで、杉原を来季の契約を結ばない選手として自由契約にする旨を発表した。2023年に育成指名された選手のうち、2026年の時点で来季の契約が決まっていない選手の一人となった。
自由契約は、球団との契約が継続しないことを意味するが、今後の再契約や別球団でのプレーまで一律に否定するものではない。今後の動向を判断するには、球団からの追加発表や本人の進路に関する正式な情報を確認する必要がある。
【カープドラフト2023の評価と評判】成功と課題をどう判断するか
2023年ドラフトの評価を2026年時点で整理すると、現時点では「一部で明確な成果が出た一方、上位指名の期待には課題が残る」という見方が妥当だ。
プラス材料として目立つのは、高太一が防御率1.90、24ホールドを記録し、救援陣の一角を担ったことだ。佐藤啓介も育成指名から支配下登録を経て一軍70試合に出場し、杉田健も2026年に支配下登録へ進んだ。育成を含めた8人の中から、複数の選手が一軍戦力としての足場を築いている。
一方、ドラフト1位の常廣羽也斗は一軍での登板が限られ、2026年10月には右肘の手術を受けた。滝田一希は2026年の一軍登板がなく、仲田侑仁も一軍で継続的な出場機会を得る段階には達していない。赤塚健利と杉原望来は、それぞれ戦力外通告と自由契約の通知という結果になった。
ただし、8人の指名結果をすべて同じ基準で採点するのは適切ではない。大学生投手には比較的早い段階での一軍貢献が期待される一方、高校生や育成選手には育成期間が必要になる。選手の役割、年齢、故障の有無、出場機会を踏まえた評価が欠かせない。
また、ドラフト直後に新井監督が「100点満点」と評価したことと、2026年時点の実績は矛盾するものではない。当時のコメントは、指名方針や交渉権獲得への手応えを示すものだ。実際に選手が一軍で活躍するかどうかは、その後の成長や故障、起用法によって変わる。
評価と評判を見比べる際には、ドラフト直後の期待、シーズン中の一時的な成績、シーズン終了時点の公式記録を分けて考えたい。SNSや掲示板での評価も参考にはなるが、特定の投稿だけをファン全体の総意と見なすのは避けるべきだ。
【歴代ドラフト指名選手と比較】2023年の補強方針は正しかったのか
広島の歴代ドラフトを振り返る際、上位指名選手が早期に主力となった例として、2019年ドラフト1位の森下暢仁、2020年ドラフト1位の栗林良吏が挙げられる。両投手は一軍で役割を確立し、球団の投手陣を支える存在となった。
こうした成功例と比べると、2023年1位の常廣羽也斗は、2026年時点で一軍実績と健康面の両方に課題を残している。一方、高太一は救援投手として成果を出し、佐藤啓介は育成指名から一軍出場を増やした。2023年のドラフトは、上位指名の期待と、下位・育成指名の伸びしろが異なる形で表れた年といえる。
2023年の補強方針を考えるうえで重要なのは、支配下5人のうち4人が投手、育成3人のうち2人も投手だった点だ。計8人中6人を投手とし、即戦力候補と将来性のある選手を組み合わせた。投手陣の層を厚くする狙いが明確なドラフトだった。
もっとも、投手を多く指名したこと自体が成功を保証するわけではない。先発と救援のどちらで使うのか、左右のバランスをどう整えるのか、故障者が出た場合に代替できる層があるかなど、編成全体の中で指名選手がどの役割を担えるかが重要になる。
また、野手2人のうち仲田はファームで経験を積み、佐藤は一軍出場を増やした。野手の補強人数が少なかったことだけを問題視するのではなく、既存の野手陣との競争や、選手ごとの成長速度も含めて評価する必要がある。
2026年は、ドラフトから3シーズンが経過した段階だ。高太一のように役割を確立した選手がいる一方、常廣や仲田のように今後の成長を見極めたい選手もいる。歴代ドラフトとの比較では、単年の成績だけでなく、入団から数年後にどれだけ主力を輩出できたかという長期的な視点が欠かせない。
【カープドラフト2023】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:広島カープの2023年ドラフト指名選手は何人ですか?
A1:支配下5人、育成3人の合計8人です。投手6人、内野手2人で、大学生投手を中心とした指名でした。
Q2:2026年に最も一軍で結果を残した指名選手は誰ですか?
A2:投手では高太一が一軍56試合、防御率1.90、24ホールドを記録しました。野手では佐藤啓介が一軍70試合に出場し、5本塁打を記録しています。
Q3:常廣羽也斗の2026年成績と現在の状況は?
A3:2026年は一軍7試合に登板し、防御率4.50、0勝0敗でした。10月2日に右肘頭骨棘障害の骨棘切除術を受けており、復帰に向けたリハビリと今後の登板機会が焦点です。
Q4:佐藤啓介はいつ支配下登録されましたか?
A4:2024年6月7日に育成選手から支配下選手へ移行しました。2026年は一軍70試合に出場し、打率.203、5本塁打、16打点を記録しています。
Q5:赤塚健利と杉原望来は現在どうなっていますか?
A5:赤塚健利は2025年10月1日に広島から戦力外通告を受けました。杉原望来は2026年10月26日に球団から来季契約を結ばない旨の通知を受け、自由契約となりました。今後の進路は、それぞれの正式発表を確認する必要があります。
まとめ:2023年ドラフトの評価は一軍での役割と今後の成長で決まる
広島カープの2023年ドラフトは、支配下5人・育成3人の計8人を指名し、投手陣の強化を中心に編成した年だった。2026年時点では、高太一が救援投手として一軍で結果を残し、佐藤啓介が育成指名から支配下登録を経て出場機会を増やすなど、成果が見える選手が出ている。
一方、常廣羽也斗は右肘手術からの復帰が課題となり、滝田一希と仲田侑仁は一軍で継続的な実績を積む段階にある。赤塚健利と杉原望来には、それぞれ戦力外通告と自由契約の通知という厳しい結果が待っていた。
このドラフトを評価する際は、1位指名の成否だけで全体を判断するのではなく、8人それぞれの成長と役割を確認することが大切だ。2026年の数字は、指名時の期待がどこまで実績につながったかを示す途中経過でもある。今後の焦点は、常廣が健康を取り戻して本来の力を発揮できるか、高太一が救援での安定感を維持できるか、そして佐藤や仲田らが打撃・守備の両面で一軍に定着できるかにある。
2023年ドラフトの最終評価は、これからの成長と一軍での貢献によってさらに変わっていく。広島の補強方針を見極めるうえでも、指名順位だけではなく、選手がどのような役割を獲得し、チームの勝利にどれだけ貢献したかを追うことが重要だ。