ホロライブと中国の間で何があったのか。発端となったのは、2019年から本格化した中国市場への進出と、2020年9月に桐生ココ・赤井はあとの配信をきっかけに発生した台湾問題です。騒動は中国の動画プラットフォーム「bilibili」での批判や運営会社カバーへの抗議に発展し、最終的にはホロライブ中国(hololive CN)の全6名が卒業する結果につながりました。
ただし、2026年現在の状況を「ホロライブが中国から完全に消えた」と説明するのは正確ではありません。中国向けグループの終了と、その後のbilibili公式チャンネルの更新、現地イベントへの参加は、それぞれ分けて考える必要があります。2019年の進出から2020年の炎上、メンバーの卒業、そして2026年の最新動向まで、公式発表と当時の報道をもとに整理します。
【背景】ホロライブはなぜ中国市場に進出したのか?

ホロライブを運営するカバー株式会社は、2019年1月8日、中国の動画共有プラットフォームbilibiliの運営会社と正式に契約し、中国展開を本格化しました。当初はホロライブ所属VTuber14名と公式チャンネルの計15チャンネルを開設し、日本のYouTube動画への中国語字幕付与、同時配信、bilibili独自動画の投稿などを計画していました。
この進出には、すでに中国で高い人気を獲得していたタレントの存在がありました。カバーの2019年2月の公式発表では、白上フブキがbilibiliのVTuberランキングで2位、湊あくあが9位に入ったと報告されています。白上フブキのチャンネル登録者数は約30万人、湊あくあは約10万人に達しており、中国市場には大きな成長余地がありました。
つまり、ホロライブと中国の関係は、2020年の炎上によって突然始まったものではありません。中国語圏のファンによる字幕制作や動画視聴、現地プラットフォームでの配信を土台に、事業としての展開が進んでいたのです。
その後、ホロライブ中国は現地向けのグループとして活動を展開しました。メンバーは夜霧(Yogiri)、希薇娅(Civia)、黒桃影(Spade Echo)、朵莉丝(Doris)、阿媂娅(Artia)、罗莎琳(Rosalyn)の6名です。2019年から2020年にかけて育ててきた事業基盤が、翌年ではなく、わずか数か月の騒動で大きく揺らぐことになりました。
出典:カバー株式会社「ホロライブ、bilibiliとVTuber事務所として初めて正式に契約し、中国展開を開始」「ホロライブ、中国展開をますます加速」の公式発表。
【時系列】2019年から2026年まで、ホロライブ中国騒動で何があった?
騒動を理解するには、台湾発言だけを見るのではなく、中国進出からグループ終了、その後の公式活動までを時系列で追う必要があります。主要な出来事を以下にまとめました。
| 時期 | 出来事 | 意味・その後の展開 |
|---|---|---|
| 2019年1月 | カバーがbilibiliと正式契約 | 公式チャンネルを開設し、中国での本格展開を開始。 |
| 2019年9月 | ホロライブ中国の展開が進展 | 2期生Doris、Artia、Rosalynのデビューが発表される。 |
| 2020年9月24〜25日ごろ | 赤井はあと、桐生ココが視聴者データを紹介 | 台湾が視聴者の多い地域として表示され、中国で政治的な批判が広がる。 |
| 2020年9月27〜30日 | カバーが声明を発表し、両名を活動休止に | 約3週間の休止を発表。日本語版と中国語版の声明の違いも議論を招く。 |
| 2020年11月12〜16日 | ホロライブ中国全6名の卒業が決定 | 当初の5名に黒桃影が加わり、全員の卒業が公表される。 |
| 2020年11〜12月 | 各メンバーが順次卒業 | 中国向けグループとしての活動が終了する。 |
| 2023〜2025年 | bilibili公式チャンネルの更新や現地イベント参加が話題に | 中国との接点が一切なくなったわけではないことが明らかになる。 |
| 2026年 | Bilibili World 2026への出展を告知 | 公式グッズ販売やホロライブインドネシアのメンバーによるステージが案内される。 |
この時系列で重要なのは、2020年9月の炎上と、11〜12月のホロライブ中国全員の卒業が別々の段階で起きていることです。炎上後に中国での事業環境が悪化し、現地グループの維持が難しくなったとみられますが、公式発表が個々の卒業について詳細な理由を一律に説明したわけではありません。
また、カバーが公式に公表したのは、各メンバーの卒業に関する告知です。「中国市場からの撤退」という表現は、その後の現地グループ終了や事業活動の変化を総合して用いられるものであり、すべての活動を同日に一括終了すると発表したという意味ではありません。
出典:カバー株式会社の2019年・2020年の公式発表、KAI-YOU、PANORAなどの当時の報道。
【炎上の理由】桐生ココ・赤井はあとの台湾発言は何が問題だったのか?
2020年9月の騒動は、YouTubeのチャンネル分析データを配信中に紹介したことから始まりました。赤井はあとは9月24日ごろ、桐生ココは翌25日ごろの配信で、視聴者の地域別構成を取り上げています。そのデータには台湾が独立した地域名として表示されていました。
当時の台湾は、政治的な位置づけをめぐって中国で非常に敏感な問題でした。中国では台湾を中国の一部とする立場が重視されるため、台湾を中国本土とは別の地域として表示したデータを紹介する行為が、台湾を独立した国家として扱ったものだと受け止められ、反発が拡大しました。
ここで押さえておきたいのは、配信で行われたことと、視聴者がそこから読み取った政治的な意味は同一ではないという点です。発端となったのは、YouTubeの分析画面に表示された視聴者データの紹介でした。カバーの2020年9月27日の声明と9月30日の説明では、機密性のあるチャンネル分析情報の公開や、特定地域の人々への配慮を欠く発言が問題として扱われています。
当時の報道では、カバーは両名を約3週間活動休止とし、復帰予定日を10月19日としていました。台湾問題への批判だけでなく、企業としての情報管理や、国際的な配信活動における地域への配慮も処分の理由に含まれていたのです。
一方、騒動の背景には、国・地域別の視聴者データを紹介するという通常の配信行為が、国際政治上の問題として解釈される難しさがありました。配信者が意図した内容だけでなく、表示されるデータの区分や、その地域で一般的に共有されている政治的認識まで影響するという構造的な問題です。
出典:カバー株式会社「弊社所属タレントの配信内の一部言動に対する問題につきまして」「9月27日(日)に公表した公式声明における経緯説明と今後の弊社方針につきまして」、Taipei Timesの2020年10月1日付報道。
【中国の反応と二次炎上】カバーの謝罪はなぜ批判を広げたのか?
桐生ココと赤井はあとの配信に対する反発は、個々のタレントへの批判だけにとどまりませんでした。中国の動画プラットフォームbilibiliでは関連動画への対応や批判が広がり、ホロライブのほかのチャンネルや運営会社にも抗議が向けられました。
騒動をさらに複雑にしたのが、カバーの日本語版と中国語版の声明の違いです。日本語版では、情報公開や特定地域への配慮に関する問題が説明されました。一方、中国向けの声明では、中国の主権・領土の一体性を尊重し、「一つの中国」原則を支持する趣旨が示されました。
この違いは、中国側の批判を抑えるための対応として受け止められた一方、日本や海外のファンの間では、同じ企業が配信先によって異なる政治的メッセージを発しているという批判を招きました。中国側への対応を強めれば海外ファンの不信を招き、反対に中国側への配慮が足りなければ現地での事業継続が難しくなるという、難しい状況に陥ったのです。
つまり、ホロライブ中国騒動は「台湾という言葉を使ったから炎上した」という単純な話ではありません。地政学的に敏感なテーマ、プラットフォームごとの反応、企業の危機対応、そして異なる地域のファンが求める説明の食い違いが重なり、問題が拡大しました。
当時の評判も一枚岩ではありませんでした。中国側では台湾問題への対応を求める批判が起こり、日本や海外のファンの一部からは、活動休止という対応や声明の違いに対する疑問が上がりました。どちらか一方の反応だけを取り上げると、騒動の全体像を見誤ります。
出典:Taipei Times、中央社(CNA)、カバー株式会社の2020年9月27日・30日の公式声明。
【ホロライブCN解散】メンバー6人の卒業一覧とその後
2020年11月12日、カバーはホロライブ中国の5名について卒業予定日を公表しました。さらに11月16日には黒桃影(Spade Echo)の卒業も発表され、グループの全6名が卒業することになりました。
公式発表で確認できる卒業日は次のとおりです。なお、最初の告知から一部日程が変更されているため、一覧では11月16日の更新を反映した日付を掲載しています。
- 希薇娅(Civia):2020年11月18日
- 阿媂娅(Artia):2020年11月19日
- 黒桃影(Spade Echo):2020年11月21日
- 夜霧(Yogiri):2020年12月20日
- 朵莉丝(Doris):2020年12月26日
- 罗莎琳(Rosalyn):2020年12月27日
この決定によって、ホロライブ中国は所属メンバー全員が離れることになりました。中国向けの活動を支えていたグループが消滅したため、事業面でも中国展開の大きな転換点となりました。
ただし、6名の卒業理由を「全員が台湾騒動を理由に辞めた」と一括りにするのは適切ではありません。公式発表は卒業日を告知していますが、個々の事情を統一的に説明しているわけではないためです。騒動後の事業環境の変化と、各メンバーの卒業に関する個別事情は区別して理解する必要があります。
卒業後の活動についても、全員が同じ道をたどったわけではありません。別名義で活動したり、異なる配信環境で活動を続けたりするケースがある一方、ホロライブCNとしての活動は終了しています。過去の名義と現在の配信者を結びつける情報については、本人の発信や信頼できる報道によって確認することが大切です。
また、桐生ココ自身は2021年7月1日にホロライブを卒業しました。カバーは2021年6月に卒業を発表し、本人の意向を尊重して卒業を受け入れたと説明しています。ただし、卒業の直接的な理由については詳しい説明が公表されていないため、2020年の台湾騒動だけを原因と断定することはできません。
出典:カバー株式会社「『ホロライブ中国』メンバーの卒業に関するお知らせ」「『ホロライブ中国』メンバー卒業と卒業日の一部変更に関するお知らせ」「『桐生ココ』卒業に関するお知らせ」、PANORA、KAI-YOU。
【2026年最新】ホロライブと中国の関係は現在どうなっている?
2026年現在のホロライブと中国の関係を理解するうえで重要なのは、ホロライブ中国というグループの終了と、中国向けの公式活動が再び行われることは両立するという点です。
2023年には、長期間更新が止まっていたホロライブのbilibili公式チャンネルが再び更新されたことが話題になりました。2024年にはBilibili WorldやBilibili Macro Linkなどの公式イベントへの参加が発表され、ホロライブとbilibiliの接点が再び表面化しています。
さらに2026年6月、bilibili上のホロライブ公式アカウントは、7月10〜12日に上海で開催されるBilibili World 2026への出展を告知しました。公式グッズの販売や撮影スポットに加え、ホロライブインドネシアのメンバーによる特別ステージも案内されています。
これは、2020年の騒動以降、ホロライブと中国の関係が完全に途絶えたわけではないことを示す具体的な動きです。ただし、イベント出展や公式アカウントの更新だけで、ホロライブCNが復活した、あるいは中国市場への全面的な再進出が完了したと判断することはできません。
現状を整理すると、次の3点が大切です。
- ホロライブCN:2020年末に全6名が卒業し、当時のグループは終了している。
- bilibiliでの公式活動:公式チャンネルの更新やイベント出展など、限定的な接点が確認できる。
- 中国市場への全面再進出:ホロライブCNの再結成や、以前と同様の現地運営体制が復活したことを示す発表とは区別する必要がある。
つまり、「ホロライブは中国から完全撤退したまま」という説明も、「2026年には完全復活した」という説明も、実態を単純化しすぎています。中国向けグループは終了した一方、公式イベントやプラットフォームを通じた活動は続いています。2026年の現状は、過去の事業形態がそのまま復活したというより、活動の範囲や形を変えながら接点が続いている状態と捉えるのが適切です。
出典:bilibili上のホロライブ公式アカウントによるBilibili World 2026出展告知、KAI-YOUの2024年7月の報道、4Gamersの2023年8月の報道。
【プロの結論】ホロライブ中国騒動から学ぶべき3つのポイント
この騒動の本質は、台湾発言の是非だけではありません。グローバルな配信事業では、ある地域で日常的なコンテンツとして扱われる情報が、別の地域では政治的な立場の表明と解釈されることがあります。デジタルプラットフォームが国境を越えるほど、配信者と運営会社は地域ごとの事情を踏まえた判断を求められます。
第一に、情報の表示方法と政治的な受け止められ方は一致するとは限りません。視聴者の地域別データを紹介するだけでも、国・地域の区分が政治問題と結びつけば大きな批判につながります。海外向けのコンテンツでは、単に発言内容を確認するだけでなく、プラットフォームの表示仕様や地域ごとの文脈を理解することが必要です。
第二に、危機対応では一貫性と説明責任が大切です。カバーは日本語版と中国語版で異なる内容を発信したため、一方への配慮が別の地域では不信につながりました。複数の市場で事業を行う企業には、地域ごとに必要な説明を行いつつ、全体として矛盾しない方針を示すことが大切です。
第三に、現地グループの終了と市場との関係の断絶は同じではありません。ホロライブCNの全員卒業は、中国向け事業にとって大きな転換点でしたが、2023年以降のbilibili公式活動や2026年のイベント出展は、接点が形を変えて続いていることを示しています。過去の炎上を知る際にも、当時の事業終了と現在の活動を分けて確認する必要があります。
ホロライブ中国の騒動は、VTuber文化が国境を越えて広がる過程で、コンテンツ、政治、企業運営が複雑に絡み合った事例です。特定の国やファン全体を一括りにして評価するよりも、実際の発言、公式対応、各地域の反応、事業上の決定を切り分けて考えることが、騒動の実態を理解する近道になります。
【ホロライブ中国何があった】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ホロライブ中国が炎上した理由は何ですか? A1:2020年9月、桐生ココと赤井はあとが配信中にYouTubeの視聴者データを紹介し、台湾が独立した地域として表示されていたことが中国で政治的な批判を招きました。その後、運営会社の対応や声明の違いも議論を広げました。
Q2:桐生ココと赤井はあとは台湾を独立国家だと主張したのですか? A2:騒動の発端は、配信中にYouTubeの地域別視聴者データを紹介したことです。データの表示と紹介が政治的に解釈されたのであり、意図的に独立を主張したと断定することはできません。
Q3:ホロライブCNのメンバーは何人卒業しましたか? A3:全6名です。Civia、Artia、Spade Echo、Yogiri、Doris、Rosalynが2020年11〜12月に順次卒業しました。
Q4:ホロライブは2026年現在、中国から完全撤退していますか? A4:ホロライブCNは終了していますが、bilibili公式チャンネルの活動や中国の公式イベントへの参加は確認できます。そのため、中国向けグループの終了と、公式活動がすべてなくなったことは区別する必要があります。
Q5:桐生ココの卒業は中国騒動が原因ですか? A5:桐生ココは2021年7月1日に卒業しましたが、卒業の直接的な理由は詳しく公表されていません。2020年の騒動だけを卒業の原因と断定することはできません。
まとめ:ホロライブ中国騒動の真相と今後の見方
ホロライブと中国の間で起きた騒動は、2019年の積極的な市場進出から、2020年9月の台湾発言をめぐる炎上、カバーの活動休止措置、ホロライブCN全6名の卒業へと展開しました。騒動の影響は大きく、当時の中国向け事業は大きな転換点を迎えました。
一方、2026年にはbilibili公式アカウントでの活動やBilibili Worldへの出展告知が確認でき、ホロライブと中国の接点が完全になくなったわけではありません。ただし、これはホロライブCNの復活や全面的な市場再進出を意味するものではありません。
この問題を正確に理解するためには、台湾発言の実際の内容、運営会社の公式対応、ホロライブCNの卒業、中国向け公式活動の再開をそれぞれ区別することが大切です。過去の炎上だけで現在の関係を判断せず、公式発表や具体的な活動実績をもとに状況を見ていくことが、2026年現在のホロライブと中国の関係を読み解くうえでの重要な判断基準になります。