階段を上るだけで息が切れる、夕方になると疲れて何もする気が起きない、休日に休んでも疲労感が残る。そんな悩みを解消するために、体力をつけたいと考えている人は少なくありません。しかし、体力作りというと、ランニングやハードな筋トレを毎日続けなければならないと思いがちです。
実際には、体力をつける方法は激しい運動だけではありません。ウォーキングなどの有酸素運動、日常動作を支える筋力トレーニング、バランスのよい食事、十分な睡眠と休息を組み合わせることが基本です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、個人の体力や健康状態に合わせ、できることから身体活動を増やす考え方が示されています。
【まず確認】体力がない原因は?疲れやすい体に共通する5つの要因

体力をつける方法を考える前に、なぜ疲れやすいのかを整理しておきましょう。体力は単純な筋力だけではなく、心肺機能、筋持久力、身体を動かす能力、疲労から回復する力など、複数の要素から成り立っています。
1. 運動不足による心肺機能・筋力の低下
歩く、階段を上る、荷物を運ぶといった動作が少ない生活では、心肺機能や筋力を使う機会が減ります。その結果、以前は苦にならなかった動作でも、息切れや疲労を感じやすくなることがあります。
デスクワークが中心の人は、運動する時間だけでなく、仕事中に長時間座り続けていないかも確認しましょう。通勤時に少し歩く、エレベーターの代わりに無理のない範囲で階段を使うなど、生活活動を増やすことも体力作りの一部です。
2. 睡眠不足や休息不足
運動していても、睡眠時間が足りなかったり、仕事や家事で休息が不足したりすると、疲労が蓄積しやすくなります。身体を動かす能力を高めるには、運動による刺激だけでなく、その後に回復する時間も必要です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は個人差を踏まえながら、少なくとも6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することが勧められています。睡眠時間だけでなく、起床時に休まった感覚があるかどうかも振り返りましょう。
3. エネルギーや栄養素の不足
朝食を抜く、食事量を極端に減らす、主食を避けるといった習慣も、活動に必要なエネルギーを確保しにくくする原因です。運動量を増やしているのに食事が不足していれば、トレーニングを続けること自体が負担になる可能性があります。
体力作りでは、たんぱく質だけに注目するのではなく、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルを含めて、食事全体のバランスを整えることが大切です。
4. ストレスや生活リズムの乱れ
精神的なストレスや不規則な生活は、睡眠の質や食欲、日中の活動量に影響します。十分に眠ったつもりでも疲れが残る場合は、就寝時刻のばらつきや、寝る直前までスマートフォンを使う習慣なども見直してみましょう。
5. 病気が隠れている可能性
疲れやすさをすべて運動不足のせいにするのは禁物です。貧血、甲状腺の病気、睡眠時無呼吸症候群、心臓や呼吸器の病気などでも、疲労感や運動時の息切れが現れることがあります。
十分に休んでも強い疲労が続く場合、以前より明らかに体力が落ちた場合、少し動いただけで息切れや動悸が起きる場合は、医療機関に相談してください。胸の痛み、強い息苦しさ、失神しそうな感覚などがあるときは、運動を中止して速やかに医療機関の対応を受ける必要があります。
【初心者向け】体力をつける有酸素運動と簡単な運動メニュー
体力作りを始める人に取り入れやすいのが、有酸素運動です。ウォーキングや自転車、水中歩行など、一定時間にわたって身体を動かす運動は、心肺機能や全身持久力を高めるための選択肢になります。
ウォーキング:最初の一歩に適した運動
運動不足を解消する簡単な運動として、まず検討したいのがウォーキングです。特別な器具や高度な技術が必要なく、歩く速さや時間を自分で調整できます。
- 運動習慣がない人は、1回10〜15分程度から始める。
- 背筋を自然に伸ばし、目線を前に向けて歩く。
- 慣れてきたら、時間や歩く頻度を少しずつ増やす。
- 体調が悪い日は無理に予定をこなさず、休息を優先する。
最初から毎日30分歩く必要はありません。まずは短時間でも繰り返し取り組み、運動後に疲れが翌日まで強く残らないかを確認しながら進めましょう。
持久力アップには自転車や水中歩行も選択肢
ウォーキング以外にも、エアロバイク、自転車、水中歩行などがあります。膝や足首への負担が気になる人には、水中歩行や適切に調整したエアロバイクが選択肢になります。ただし、痛みの原因や持病によって適した運動は異なるため、症状がある場合は医療専門職に相談してください。
運動の強度は、息の上がり方を目安にすると調整しやすくなります。中強度の運動では、息が弾み、汗をかくことがあっても、会話はおおむね続けられます。会話が難しくなるほど苦しい場合は、ペースを落としましょう。
厚生労働省の推奨量は、初心者が最初から達成すべきノルマではない
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の成人向け推奨事項では、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上、歩数では約8,000歩以上が目安として示されています。また、息が弾み汗をかく程度の運動は週60分以上が推奨されています。
ただし、これらは成人向けの健康づくりの目安であり、運動経験がほとんどない人が初日から達成しなければならない数字ではありません。同ガイドは、個人差を踏まえて強度や量を調整し、今より少しでも多く身体を動かすことを勧めています。
体力作りでは、理想の運動量と現在の自分との距離を把握が必要です。10分の散歩から始めた人が、数週間後に15分、20分と無理なく続けられるようになることも、前進の一つです。
【筋持久力を高める】自宅でできる筋トレと組み合わせ方
有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングも体力作りに役立ちます。筋肉は歩く、立ち上がる、荷物を持つといった日常動作を支えています。筋力や筋持久力が向上すれば、こうした動作を行うときの負担を軽減しやすくなります。
初心者が取り組みやすい筋トレ4種目
最初は自分の体重を使った運動で十分です。以下の種目を、痛みが出ない範囲で取り入れましょう。
- 椅子スクワット:安定した椅子の前に立ち、必要に応じて椅子や手すりに手を添えながら、ゆっくり腰を下ろして立ち上がる。脚やお尻を鍛える。
- 壁腕立て伏せ:壁に手をつき、身体を一直線に保ちながら肘を曲げ伸ばしする。胸や腕、肩周辺の筋肉を鍛える。
- かかと上げ:椅子や手すりに手を添え、かかとをゆっくり上げ下げする。ふくらはぎを鍛える。
- ヒップリフト:仰向けで膝を曲げ、お尻をゆっくり持ち上げて戻す。腰を反らしすぎず、お尻の筋肉を意識する。
最初は各種目8〜10回を1セット程度の目安にし、動作を安定して行えることを優先します。回数はあくまで目安です。難しければ回数を減らし、慣れてきたらセット数や負荷を調整しましょう。
筋持久力を高めるには、正しい動作と継続が先
筋持久力を高める方法として、回数をこなすことだけを目標にするのはおすすめできません。反動を使わず、呼吸を止めずに動作を繰り返すことが基本です。フォームが崩れる場合は回数を減らし、必要に応じて休憩を入れましょう。
厚生労働省の同ガイドでは、成人と高齢者に筋トレを週2〜3日行うことが推奨されています。筋トレは毎日同じ部位を追い込むのではなく、運動する日と回復する日を組み合わせると続けやすくなります。
有酸素運動と筋トレは、どちらか一方に絞る必要はありません。たとえば、ウォーキングを中心にしながら週2日ほど自宅で筋トレを行う方法なら、心肺機能と筋力の両方に働きかけられます。
【疲れにくい体の作り方】食事・栄養素・睡眠と休息の整え方
運動を続けるためには、身体を動かすためのエネルギーと、運動後に回復する時間が欠かせない。体力をつける食事では、特定の食品やサプリメントに頼るよりも、毎日の食事と睡眠を整えることから始めましょう。
体力作りに必要な栄養素と食事の基本
農林水産省の「食事バランスガイド」では、食事を主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つの料理区分に分けています。それぞれの役割を理解して、日々の食事を組み立てるとよいでしょう。
- 炭水化物:ご飯、パン、麺などに含まれ、身体を動かすエネルギー源になる。
- たんぱく質:肉、魚、卵、大豆製品などに含まれ、筋肉や身体の組織を維持するために必要。
- ビタミンB群:エネルギー代謝に関わる。豚肉、魚、豆類、穀類など、さまざまな食品から摂取する。
- 鉄:酸素の運搬に関わる重要なミネラル。不足すると貧血につながることがある。
- ビタミン・ミネラル:野菜、果物、乳製品、豆類などを組み合わせ、幅広く摂取する。
- 水分:発汗などで失われる水分を補い、脱水を防ぐ。
体力作りの食事では、主食を極端に減らさず、主菜でたんぱく質を確保し、副菜や果物なども取り入れるのが基本です。食事量や必要なエネルギーは、年齢、体格、活動量によって変わります。
例えば、朝食にご飯と卵、昼食にご飯と魚や肉、野菜のおかず、夕食に主食・主菜・副菜をそろえる方法があります。忙しい日は、納豆、卵、ヨーグルト、冷凍野菜などを活用すると、準備の負担を抑えながら食事のバランスを整えやすくなります。
運動後は、食事と水分で回復を支える
運動後は、通常の食事で炭水化物やたんぱく質などを補給しましょう。運動の前後や最中には、気温や発汗量、運動時間に応じて水分を補給します。暑い環境で長時間運動する場合は、発汗による塩分の損失にも注意が必要です。
サプリメントは、食事だけでは補いにくい栄養素を必要に応じて補助するものです。飲めば体力がすぐにつくというものではありません。鉄などのサプリメントを自己判断で大量に摂取することも避けましょう。
体力回復には睡眠時間と休息の確保が欠かせない
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠が心身の疲労回復や健康の維持に欠かせないことが示されています。運動量を増やすときほど、睡眠時間を削ってトレーニングするような生活は避けたいところです。
- 起床時刻をなるべく一定にする。
- 成人は少なくとも6時間以上を目安に、自分に必要な睡眠時間を確保する。
- 就寝前のスマートフォンやカフェインの取り方を見直す。
- 強い筋肉痛や疲労がある日は、負荷の高い運動を控える。
必要な睡眠時間には個人差があります。十分に眠っても疲れが取れない場合は、睡眠環境や生活習慣を見直すとともに、症状が続くなら医療機関に相談してください。
【実践編】1週間で体力作りを始める運動メニュー
1週間で体力をつける方法を探している人におすすめなのは、短期間で限界まで追い込むことではなく、1週間の生活に運動を組み込むことです。最初の7日間は、どのくらいの運動なら無理なく続けられるかを確認する期間と考えましょう。
以下は、運動習慣のない健康な成人を想定した初心者向けの例です。痛みや持病がある人、高齢で身体機能が低下している人などは、そのまま実施せず、自分の状態に合う内容に調整してください。
| 曜日 | 運動メニュー | 時間の目安 | 目的・ポイント |
|---|---|---|---|
| 月曜日 | ゆっくりしたウォーキング | 10〜15分 | 身体を動かす習慣を作る。息が上がりすぎない速さで歩く。 |
| 火曜日 | ウォーキング+椅子スクワット・壁腕立て伏せ | 合計15〜20分 | 有酸素運動と筋トレを組み合わせる。筋トレは各8〜10回を1セット程度から始める。 |
| 水曜日 | 軽い散歩・無理のないストレッチ | 5〜10分 | 疲労を確認しながら、軽く身体を動かす。疲れが強ければ休養する。 |
| 木曜日 | 少し速めのウォーキング | 15〜20分 | 会話ができる範囲で、月曜日より少しだけ活動量を増やす。 |
| 金曜日 | 椅子スクワット・壁腕立て伏せ・かかと上げ | 10〜15分 | 脚、上半身、ふくらはぎを鍛える。動作の正確さを優先する。 |
| 土曜日 | ウォーキング・自転車など | 15〜20分 | 好きな有酸素運動を選び、無理のない範囲で続ける。 |
| 日曜日 | 休養、または軽い散歩 | 自由 | 疲労や筋肉痛を確認し、睡眠と食事を整える。 |
1週間の成果は、体力の完成ではなく習慣の定着で判断する
このメニューは、初週から大幅な持久力向上を保証するものではありません。運動を始めたばかりの人は、動作に慣れたり、運動への心理的な抵抗が小さくなったりすることがあります。一方、心肺機能や筋力の変化には継続的なトレーニングが必要です。
初週の終わりには、次の点を振り返ってみましょう。
- 10〜15分の運動を、無理なく実施できたか。
- 運動後の疲労が翌日まで強く残っていないか。
- 階段や歩行などの日常動作で、負担の変化を感じるか。
- 睡眠や食事を極端に削らずに取り組めたか。
予定どおりにできなかった日があっても、翌日に倍の運動をして埋め合わせる必要はありません。身体の状態に合わせて再開し、数週間単位で少しずつ運動量を調整することが、継続的な体力作りにつながります。
【挫折を防ぐ】体力作りを習慣化するコツと年代別の注意点
体力作りが続かない原因の一つは、最初から高い目標を設定しすぎることです。運動を始めた直後は意欲が高くても、疲労や筋肉痛、忙しさによって予定をこなせなくなることがあります。長く続けるためには、運動の内容だけでなく、取り組み方も工夫しましょう。
毎日の生活に運動を組み込む
Smartlogボディメイクが2026年1月8日に公開した体力作りの記事でも、運動時間を決めること、簡単な運動から始めること、継続して習慣化することなどが取り上げられています。また、uFitの「激しい運動なしで体力をつける運動メニュー10選」のような解説でも、運動と食事を組み合わせて無理なく体力作りを進める考え方が紹介されています。
こうした実践的なメニューを参考にするときも、掲載されている種目や回数をすべてこなすことより、自分の体力に合ったものを選ぶことが先決です。
- 時間を固定する:朝食後や昼休み、帰宅後など、生活の中で運動する時間を決める。
- 目標を小さくする:まずは10分歩く、椅子スクワットを数回行うなど、取り組みやすい目標にする。
- 記録をつける:運動した時間、疲労感、睡眠時間などを簡単に記録する。
- 休む日も計画に入れる:休養を失敗と考えず、継続するための予定として組み込む。
- できたことを評価する:歩数や時間だけでなく、継続できた回数や日常動作の変化にも注目する。
年代や生活環境に合わせて体力作りを調整する
10代・成長期:身体の発育に必要なエネルギーと睡眠を確保し、遊びやスポーツなどを通して身体を動かす機会を増やしましょう。体重を減らすために食事を極端に制限することは避けてください。
20〜40代:仕事や育児で時間を確保しにくい場合は、短いウォーキングや自宅での筋トレを生活に組み込みます。長時間座り続けることを避け、仕事の合間に立つ、少し歩くなどの工夫も役立ちます。
50〜60代:持久力だけでなく、脚の筋力や関節の状態にも目を向けましょう。急に運動強度を上げず、歩行と筋トレを組み合わせて、日常生活に必要な身体機能を維持することを目指します。
65歳以上:歩く運動に加え、筋力・バランス・柔軟性を意識した運動が選択肢になります。厚生労働省の高齢者向けガイドでは、こうした複数の要素を含む運動を週3日以上行うことや、筋トレを週2〜3日行うことが推奨されています。転倒の危険がある場合は、手すりや安定した椅子を利用し、必要に応じて専門家の支援を受けましょう。
運動を始める前に確認したい安全上のポイント
発熱、強い倦怠感、胸痛、めまい、少し動いただけで起こる息切れや動悸などがある場合は、無理に運動しないでください。運動中に胸痛、強い動悸、ふらつき、普段と違う強い疲労、関節や筋肉の強い痛みが現れた場合も、直ちに中止しましょう。
心臓病や呼吸器疾患などの持病がある人、運動によって症状が悪化する人は、運動の種類や強度について主治医に確認してください。体力を高めることは大切ですが、体調を崩してまで目標を達成する必要はありません。
【体力つける方法】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:体力をつけるには、毎日運動したほうがいいですか?
A1:毎日強い運動をする必要はありません。初心者は短時間のウォーキングなどから始め、筋トレは回復日を挟みながら週2〜3日を目安に取り入れましょう。疲労が強い日は休養を優先してください。
Q2:1週間で体力をつけることはできますか?
A2:1週間で体力が完成したり、大幅な持久力向上が保証されたりするわけではありません。ただし、短時間の運動を生活に取り入れ、続けられるペースを見つけることはできます。体力の変化を目指すなら、その後も数週間から数か月単位で継続することが大切です。
Q3:体力をつけるには、ランニングと筋トレのどちらが効果的ですか?
A3:目的によって異なります。息切れしにくい身体を目指すならウォーキングや自転車などの有酸素運動、脚や腕の筋力・筋持久力を高めたいなら筋トレが適しています。健康づくりでは両方を組み合わせる方法が有効です。運動初心者はウォーキングから始め、慣れてきたら筋トレを加えるとよいでしょう。
まとめ:体力をつける方法は、無理なく続けられる習慣から
体力をつけるために必要なのは、最初から激しい運動をすることではありません。ウォーキングなどの有酸素運動で持久力を養い、自宅でできる筋トレで筋力を補いながら、バランスのよい食事と十分な睡眠を確保することが基本です。
まずは1日10〜15分程度の運動から始め、身体の反応を見ながら少しずつ活動量を増やしましょう。1週間は体力作りを完成させる期間ではなく、自分に合う運動習慣を見つけるためのスタート地点です。
運動後の疲労が強く残らないか、日常動作が少し楽になったか、睡眠や食事を整えられているかを確認しながら続けることが、疲れにくい体を目指す現実的な方法です。休んでも取れない疲れや、普段と違う息切れなどが続く場合は、運動量を増やす前に医療機関へ相談してください。