プロ野球のFA移籍が決まると、必ずといっていいほど話題になるのが「プロテクト人数」と「人的補償」です。球団は何人の選手を守れるのか、プロテクトリストから外れた選手は誰が選ぶのか。将来の主力候補や実績のあるベテランが移籍する可能性もあり、オフシーズンの編成を左右する重要な制度です。
2026年10月時点でも、現行制度の基本はプロテクト28人です。一方、日本野球機構(NPB)と日本プロ野球選手会は人的補償の見直しを協議しており、10月13日の協議後も合意には至っていません。この記事では、FAランク別の補償金、外国人選手やドラフト新人の扱い、リストが公表されない理由、過去の人的補償の成功事例まで、制度の仕組みと2026年の最新動向を整理します。
【プロテクト人数は28人】2026年最新の基本ルールと人的補償の仕組み

プロ野球のプロテクトとは、FAで選手を獲得した球団が、人的補償による流出を防ぐために、守りたい選手を指定する仕組みです。指定した選手の名簿が「プロテクトリスト」と呼ばれます。
守れる人数は28人。この人数は、獲得球団が自らの戦力や将来の編成を考えて決めます。単純に年俸が高い選手から28人を並べる制度ではありません。主力選手だけでなく、成長が期待される若手や、特定のポジションで欠かせない選手をどう守るかが判断のポイントになります。
人的補償が発生する場合、基本的な流れは次のとおりです。
- 選手がFA権を行使し、他球団への移籍が成立する。
- 旧所属球団の年俸ランクに応じて、補償の対象となるかが決まる。
- 旧所属球団が人的補償を求めた場合、獲得球団がプロテクトリストを提出する。
- 旧所属球団は、リストに入っていない対象選手から原則1人を選ぶ。
- 選ばれた選手は新しい球団へ移籍し、必要に応じて金銭補償も行われる。
重要なのは、28人は「人的補償で守れる人数」であって、FA移籍に関係する選手全体の人数ではないという点です。加えて、28人のリストに入っていなくても人的補償の対象にならない選手がいます。
また、28人という数字は、あくまで現行制度の基本ルールです。2026年10月13日にはNPBとプロ野球選手会が人的補償の代替案について協議しましたが、同月14日の報道時点でも継続協議とされています。制度改定が正式に決まったと確認できるまでは、現行の28人枠と、今後の改正案を分けて理解する必要があります。
【FAランク別の補償】A・B・Cランクで金銭と人的補償はどう変わる?
プロテクト人数を理解するうえで欠かせないのが、FA選手の年俸ランクです。ランクは移籍する選手の旧所属球団における年俸順位を基準に決まり、外国人選手を除く日本人選手の順位で判定されます。
Aランクは上位3位以内、Bランクは4~10位、Cランクは11位以下です。補償が発生するのは原則としてAランクとBランクで、Cランクには人的補償も金銭補償もありません。
日本プロ野球選手会が公表しているFA補償制度の説明に基づくと、初めてFA権を行使して移籍する場合の補償内容は次のようになります。
| FAランク | 旧球団での年俸順位 | 人的補償あり | 金銭補償のみ | 再FA時の補償 |
|---|---|---|---|---|
| Aランク | 1~3位 | 選手1人+旧年俸の50% | 旧年俸の80% | 選手あり25%/金銭のみ40% |
| Bランク | 4~10位 | 選手1人+旧年俸の40% | 旧年俸の60% | 選手あり20%/金銭のみ30% |
| Cランク | 11位以下 | 補償なし | 補償なし | 補償なし |
※金銭補償の割合は旧所属球団での基準年俸に対する割合です。再FA時の数値は、過去にFA権を行使した選手が再びFA移籍する場合の基本的な割合です。
たとえば、初回FAでAランクの選手を獲得した球団は、人的補償を伴う方式なら対象選手1人に加えて旧年俸の50%、金銭のみの方式なら旧年俸の80%を補償します。旧所属球団がどちらの方式を求めるかによって、獲得球団の負担は変わります。
ここで注意したいのは、FAランクとプロテクト人数は別の基準だということです。Aランクだから守れる選手が増えるわけではなく、Bランクだから28人より少なくなるわけでもありません。A・Bランクの選手を獲得した場合に、人的補償を求められる可能性が生じるという関係です。
【対象外の選手】外国人・ドラフト新人・育成選手はプロテクトが必要?
「28人のプロテクトリストから外れたら、誰でも人的補償で移籍するのか」という疑問には、明確に「いいえ」と答えられます。人的補償の対象外となる選手がいるためです。
外国人選手は、制度上の外国人選手として扱われる場合、人的補償で獲得できる対象には含まれません。そのため、通常はプロテクト28人の枠を使って外国人選手を守る必要はありません。ただし、出身国だけで判断するのではなく、制度上の選手区分を確認することが大切です。
ドラフト新人についても、当該年度の新人選手は人的補償の対象外です。ここでいう新人は、単にプロ入りして間もない若手全般を意味するわけではありません。その年のドラフトで指名された新人選手と、すでにプロでプレーしている1年目・2年目の選手は区別して考える必要があります。
育成選手も対象外です。育成契約の選手は支配下登録選手とは区分が異なるため、通常の支配下選手を対象とするプロテクトリストとは扱いが違います。
制度のポイントを整理すると、次のようになります。
- プロテクト対象:人的補償の対象となり得る支配下登録選手のうち、獲得球団が守ると指定した28人。
- リスト外でも対象外:制度上の外国人選手、当該年度の新人選手、育成選手など。
- リスト外で選択可能:上記の対象外に該当せず、プロテクトされていない選手。
つまり、人的補償の候補を考えるときは、まず選手が対象になるかどうかを確認し、そのうえでプロテクトリストに入っているかを判断する必要があります。「リスト外」という情報だけでは、人的補償の対象になるかどうかまでは確定しません。
【プロテクトリストはなぜ非公表?】リスト外の選手はどう選ばれるのか
プロテクトリストがファンにとって気になる存在でありながら、通常は公表されないのは、球団の編成戦略に直結する資料だからです。どの選手を守り、どの選手をリストに入れなかったのかが明らかになれば、球団が評価する戦力や、将来のチーム構想の一端が外部に伝わることになります。
また、リストに入らなかった選手に対して、球団がどの程度の評価をしているのかという憶測が広がる可能性もあります。選手の心理面やチーム内の関係にも影響するため、球団がリストの内容を積極的に公開する利点は大きくありません。
ここで押さえておきたいのは、プロテクトリストの予想と、球団が実際に提出したリストは別物だということです。ファンやメディアが公開情報を基に予想を作成することはできますが、球団が公表していない28人の顔ぶれを確定情報として扱うことはできません。
では、旧所属球団はリスト外の選手をどのような基準で選ぶのでしょうか。考えられる判断材料は、主に次の5つです。
- 即戦力性:移籍直後から一軍で起用できる能力があるか。
- 将来性:年齢や成長の余地を考え、数年後の主力になれるか。
- ポジションの希少性:先発投手、救援投手、捕手など、自球団で不足している役割を担えるか。
- 契約と保有期間:年俸や契約状況を踏まえ、長期的に戦力として計算できるか。
- 起用機会:獲得後に十分な出場機会を与え、能力を引き出せるか。
ここで重要なのは、リスト外の選手が必ずしも「球団から評価されていない選手」ではないという点です。28人という上限があるため、実力のある選手でもポジション構成やチーム事情によってリストから漏れる可能性があります。
また、旧所属球団が選手を選ぶ際には、獲得球団での成績だけでなく、自球団に加わった後の役割も考慮する必要があります。ある球団では出場機会が限られていても、別の球団では主力として活躍できることがあるからです。
【人的補償の成功事例】一岡竜司と田中正義が示した制度の実態
人的補償は、獲得球団にとって主力を失うリスクがある一方、旧所属球団にとっては新たな戦力を得る機会でもあります。その実態を理解するうえで、一岡竜司投手と田中正義投手の事例は代表的です。
一岡竜司:巨人から広島へ移籍し、救援陣の一角に
2013年12月25日、巨人から広島への一岡竜司投手の移籍が発表されました。広島からFAで巨人へ移籍した大竹寛投手の人的補償として選ばれたものです。当時22歳だった一岡投手は、巨人での一軍登板経験が限られていましたが、移籍後に出場機会を増やしていきました。
NPB公式の年度別成績によると、一岡投手は2014年に31試合に登板し、防御率0.58を記録しました。さらに2017年と2018年には、それぞれ59試合に登板しています。人的補償で獲得した選手が、複数年にわたってブルペンを支えた事例として評価できます。
この事例から見えてくるのは、移籍時点での知名度や実績だけでは、人的補償の価値を測れないということです。獲得球団が役割を明確にし、継続的に起用できる環境を整えることが、選手の能力を引き出す条件になります。
田中正義:ソフトバンクから日本ハムへ移籍し、守護神として活躍
2023年1月11日、近藤健介選手のFA移籍に伴う人的補償として、田中正義投手が福岡ソフトバンクホークスから北海道日本ハムファイターズへ移籍することが発表されました。日本ハム球団の公式発表でも、FA規約に定める選手による補償として獲得したことが説明されています。
田中投手は日本ハム移籍1年目の2023年に47試合へ登板し、25セーブを記録しました。2024年も20セーブを挙げており、人的補償で獲得した投手が抑えとして機能した例です。一方、2026年は登板数や役割が変化しており、選手の価値は獲得直後の成績だけでなく、複数年にわたって評価する必要があります。
一岡投手と田中投手の事例に共通するのは、獲得時点での評価と、移籍先で実際に発揮する能力が必ずしも一致しないことです。プロテクトリストの予想を読むときも、単に「有名な選手が外れているか」だけで判断するのではなく、獲得する側のチーム事情や起用方針まで考えると、人的補償の意味が見えてきます。
【12球団のプロテクトリスト予想】球団別比較で見るべき2026年の注目点
12球団のプロテクトリストを予想する場合、各球団の支配下登録選手を基に、どの28人を守るのかを考えることになります。ただし、実際のリストは公表されないため、予想記事やシミュレーションサイトに掲載された名前は、あくまで公開情報を基にした推測です。
球団別比較で特に注目したいのは、投手と野手の人数配分です。投手を厚く守るのか、将来の主軸候補となる野手を優先するのかは、球団の戦力構成によって変わります。たとえば先発投手が不足する球団では、実績のある先発候補や将来性の高い若手投手を優先する可能性があります。一方、捕手や内野手に選手層の薄さがある球団では、そのポジションの選手を厚く守る判断も考えられます。
プロテクト人数が28人に固定されているからこそ、球団ごとの判断の違いが生まれます。全員を守ることはできないため、現在の戦力、数年後のチーム構想、故障からの復帰見込み、契約状況などを総合的に考える必要があります。
2026年の最新動向として、人的補償制度そのものの見直しも注目です。NPBは2026年5月、人的補償の撤廃と代替案の検討を進めていることを明らかにしました。その後、ドラフト指名権の譲渡などが代替案として議論されましたが、選手会は移籍の障壁が高まる可能性を問題視していました。
8月には、人的補償の見直しを2026年オフから導入するのは難しいとの考えが選手会側から示されました。さらに10月13日の協議では、NPB側から再提案された案について話し合いが進んだ一方、合意には至っていません。10月14日の報道でも継続協議とされており、改定の時期や最終的な仕組みは確定していません。
したがって、2026年のプロテクト人数を調べる読者は、次の3点を分けて確認するのが適切です。
- 現行ルール:人的補償では28人のプロテクト枠を基本とする。
- 球団別の予想:公開された選手名簿やチーム事情に基づく推測であり、公式リストではない。
- 制度改正の情報:NPBと選手会の協議内容と、正式に決定・公表された規則を区別する。
この3点を押さえておけば、SNSやまとめ記事で「プロテクト漏れ」とされる選手名を見かけても、それが確定情報なのか、ファンの予想なのか、制度上の対象外なのかを整理して判断できます。
【プロテクト人数】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:プロテクト人数は何人ですか?
A1:現行制度では28人です。FA移籍に伴って人的補償を求められた場合、獲得球団は人的補償で移籍させたくない選手を28人まで指定できます。ただし、外国人選手や当該年度の新人選手など、制度上の対象外となる選手もいます。
Q2:プロテクトリストから外れた選手は必ず移籍しますか?
A2:必ず移籍するわけではありません。旧所属球団が人的補償を求めた場合に、プロテクト外の選手の中から対象となる選手を原則1人選びます。旧所属球団が金銭補償のみを選択した場合は、人的補償による選手の移籍は発生しません。
Q3:2026年はプロテクト28人のルールが変わりますか?
A3:2026年10月時点では、人的補償の撤廃や代替制度についてNPBとプロ野球選手会が協議を続けています。10月13日の協議後も合意は公表されておらず、変更内容や適用時期は確定していません。最終的な制度はNPBの正式発表で確認する必要があります。
まとめ:プロテクト人数28人の意味と、2026年以降に注目すべきポイント
プロテクト人数は、現行制度では28人です。FA移籍に伴う人的補償では、獲得球団が守る選手を指定し、旧所属球団はそのリストに入っていない対象選手から原則1人を選びます。ただし、外国人選手や当該年度の新人選手、育成選手などは対象外となるため、単純に「28人以外は全員候補」と考えることはできません。
人的補償の価値は、獲得時点の知名度や成績だけでは測れません。一岡竜司投手や田中正義投手の事例が示すように、移籍先での役割や起用方針によって、選手が発揮する価値は変わります。リスト外の選手を評価する際には、年齢、将来性、ポジションの希少性、チームの補強ポイントまで考えることが大切です。
そして2026年は、プロテクト28人枠だけでなく、人的補償制度そのものの見直しが焦点になっています。NPBと選手会の協議が今後どのようにまとまるかによって、FA移籍の補償の仕組みが変わる可能性があります。現行ルールと予想情報、正式に決まった改正内容を区別しながら、今オフのFA戦線と各球団の編成判断に注目しましょう。