俳優の松重豊と、ロックバンド「ザ・クロマニヨンズ」のボーカル・甲本ヒロト。2人の関係を語るうえで欠かせないのが、東京・下北沢の中華料理店「珉亭(みんてい)」で過ごした若き日のアルバイト時代だ。映画監督を夢見ていた松重と、ミュージシャンを目指していた甲本は、約40年前、同じ日にアルバイトを始めたことをきっかけに親交を深めた。
その友情は、2025年1月10日に公開された『劇映画 孤独のグルメ』の主題歌「空腹と俺」で、40年越しのコラボレーションへと結実した。松重が監督・脚本・主演を務める映画に、甲本が率いるザ・クロマニヨンズが楽曲を提供したのだ。2026年10月現在、2人がそれぞれの表現活動を続けるなか、この再タッグにはどんな背景があったのか。公式発表や本人たちの対談、報道内容をもとに、出会いから楽曲制作の舞台裏まで整理する。
【出会いの経緯】松重豊と甲本ヒロトはなぜ珉亭で知り合った?

松重豊と甲本ヒロトが初めて出会ったのは、2人が19歳ごろだった1980年代前半。場所は、東京・下北沢にある中華料理店「珉亭」だ。
2025年1月に掲載された『週刊SPA!』の特別対談で、松重は、どちらかが皿洗いをしているときに「ヒロトじゃ」「豊です」と挨拶したことを振り返っている。甲本は岡山県から、松重は福岡県から上京しており、同い年だった2人には言葉の響きにも似たところがあったという。
ただし、2人が出会ったのは芸能界の現場でも、音楽業界の人脈を通じた華やかな交流の場でもない。映画監督を目指す青年と、バンドマンとして活動することを志す青年が、生活費を稼ぐために働いていた飲食店だった。
松重は映画を撮るための資金を必要としており、甲本も音楽の道を志していた。日給で働き、仕事が終われば飲みに行く。生活に余裕があるわけではなく、食事に困るほど空腹だった時期もあったと、2人は対談で語っている。
印象的なのは、アルバイトのシフトが必ずしも厳密に固定されていなかったことだ。甲本は、前日に「明日行ってもいいですか?」と連絡するような働き方だったと回想している。食事に困ったときには、まかないを食べに店へ行くことも許されていたという。
この経験が、後年の主題歌「空腹と俺」にもつながる。空腹は映画の主人公・井之頭五郎にとって物語を動かすきっかけであると同時に、松重と甲本が若き日に共有した現実でもあった。
『日刊SPA!』の対談記事や映画発表時の報道は、珉亭での出会いを、単なる有名人同士の昔話ではなく、2人がそれぞれの夢を追い始めた時期の共通体験として伝えている。
【40年来の友情】松重豊が甲本ヒロトに抱き続けた思いとは?
2人の関係を理解するうえで重要なのは、珉亭で一緒に働いていたという事実だけではない。松重は若い頃、自主制作映画を撮ろうとしており、その作品で甲本を主演に起用していた。
当時の松重は映画監督を志していたものの、8ミリフィルムによる映画制作には、フィルム代や現像費などの資金が必要だった。アルバイトで資金を工面しながら撮影を続ける計画は、経済的な事情などから頓挫。松重は、甲本に主演を依頼していた映画を完成させられなかった。
松重はその後の取材で、作品を撮れなくなったことを甲本に謝った経験や、20歳ごろに映画監督になる夢をいったん封印したことを語っている。甲本にとっても、松重は単に昔同じ職場で働いていた友人というだけではなく、若き日に映画の主演を任せてくれた人物だった。
その関係が約40年後に再び意味を持つ。松重が『劇映画 孤独のグルメ』の監督を引き受けることになった際、主題歌を甲本に依頼したのは、昔の友情を懐かしむだけの企画ではなかった。若い頃に実現できなかった映画づくりを、違う形でもう一度一緒に成し遂げたいという思いが背景にあった。
2024年12月に公開された2人のスペシャル対談について、映画関連メディアは、松重が甲本に「ラブレター」を送る形で主題歌を依頼した経緯を報じている。松重は、甲本にとっても自身にとっても特別な意味を持つ今回の仕事を、40年越しの再挑戦として捉えていた。
この友情の特徴は、長い時間を一緒に過ごし続けたことではなく、それぞれが別の道を歩んだ後も、若い頃に共有した夢や記憶が残っていた点にある。俳優として活動する松重と、ロックミュージシャンとして活動する甲本。異なる分野でキャリアを築いた2人が、再び一つの作品で交わったのである。
【年表で整理】珉亭での出会いから『劇映画 孤独のグルメ』まで
松重豊と甲本ヒロトの関係は、出会い、若き日の未完の映画、そして主題歌制作という3つの段階で捉えると理解しやすい。主要な出来事を時系列でまとめた。
| 時期 | 出来事 | 関係性・意味 |
|---|---|---|
| 1980年代前半ごろ | 下北沢の中華料理店「珉亭」でアルバイト | 19歳ごろの2人が同じ日に働き始め、交流を深める。 |
| 学生時代 | 松重が8ミリフィルムで自主映画を制作 | 甲本が主演を務めたものの、作品は未完成に終わる。 |
| 2016年10月 | 松重が担当するラジオ番組に甲本が出演 | FMヨコハマの番組『深夜の音楽食堂』初回ゲストとして共演。 |
| 2024年10月31日 | 主題歌アーティストを発表 | 『劇映画 孤独のグルメ』の主題歌をザ・クロマニヨンズが担当すると発表。 |
| 2024年12月10日 | スペシャル対談映像を公開 | 主題歌の依頼経緯や珉亭での思い出を2人が語る。 |
| 2025年1月10日 | 『劇映画 孤独のグルメ』公開 | 主題歌「空腹と俺」を通じて約40年越しの再タッグが実現。 |
| 2026年10月 | それぞれの活動を継続 | 松重は新作ドラマの企画・監督などに取り組み、ザ・クロマニヨンズも新作リリースを発表。 |
この年表で注目したいのは、2016年にも松重と甲本がラジオ番組で共演していたことだ。FMヨコハマの『深夜の音楽食堂』は、松重がDJを務めた番組で、甲本は初回ゲストとして登場している。つまり、2025年の主題歌制作が、40年間まったく接点のなかった2人の突然の再会だったわけではない。
また、2024年10月の主題歌発表から同年12月の対談映像公開、2025年1月の映画公開へと、プロジェクトは段階的に具体化した。テレビ東京の公式発表でも、映画の監督は松重、主題歌はザ・クロマニヨンズの「空腹と俺」と明記されている。
【共演の経緯】なぜ『劇映画 孤独のグルメ』の主題歌を甲本ヒロトに依頼したのか
松重豊が甲本ヒロトに主題歌を依頼した理由は、大きく分けて3つある。旧友としての信頼、若き日の映画制作に対する思い、そして『孤独のグルメ』という作品との相性だ。
最初に、松重にとって甲本は、40年来の友人であり、かつて自分が撮ろうとした映画の主演俳優でもある。映画監督という夢をいったん諦めた過去があるからこそ、今回の劇映画制作は単なる新しい仕事ではなかった。再び監督として映画を作る機会を得た際、かつて主演を務めてくれた甲本に音楽を依頼したいと考えたのは、自然な流れだった。
松重は甲本への依頼に際し、「腹減っとんじゃ!」というイメージの曲を、ボ・ディドリー・ビートで作ってほしいという趣旨の手紙を送ったと、映画公開時の報道で紹介されている。具体的な音楽的イメージを伝えたことからも、旧友に任せきりにするのではなく、作品の世界観と楽曲を結びつけようとしていたことがうかがえる。
一方、甲本は対談で、普段は楽曲制作のテーマを指定されても簡単には応じられないという自身のスタイルを説明している。しかし、今回は特別な依頼だった。もともと『孤独のグルメ』が好きだったことに加え、松重から声をかけられたことが、制作を引き受ける大きな理由になったと報じられている。
甲本にとっても、松重との仕事は単なる楽曲提供ではなかった。自分が好きな作品の側に参加できること、そして長い付き合いのある友人が本気で取り組む映画に力を貸せることに意味があったのだ。
ここで押さえておきたいのは、映画本編への出演と主題歌での共演は別だという点である。甲本は本作の主題歌を担当し、松重は監督・脚本・主演を担った。若い頃に甲本が松重の自主映画で主演を務めたという過去のエピソードと、2025年の劇映画における音楽面でのコラボレーションを混同しないことが大切だ。
【「空腹と俺」の歌詞と制作秘話】40年前の記憶はどう楽曲になった?
「空腹と俺」の制作背景で重要なのは、タイトルに含まれる「空腹」が、映画のテーマと2人の実体験の双方に結びついていることだ。
『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎は、仕事先で自分が食べたいものを探し、食事を通じてその土地や人々と出会う人物である。テレビシリーズでは、食べることそのものが物語の中心に置かれてきた。劇映画では、五郎が幼い頃に飲んだスープを探す旅に出るという、より大きなストーリーが展開される。
一方、松重と甲本が珉亭でアルバイトをしていた頃、2人は生活に余裕がなく、食事に困ることもあった。甲本が当時の空腹やまかないの思い出を語り、松重もそれに応じていることから、「空腹と俺」は単に食欲を歌う楽曲というだけではなく、映画の主人公と、かつて夢を追っていた2人の青年をつなぐモチーフとして受け取れる。
報道では、松重が楽曲のイメージを伝え、甲本がそれに応えて書き下ろしたことが紹介されている。特に「腹減った!」という言葉は、若き日の2人が口にしていた言葉でもあり、松重は過去の記憶と映画の世界観が重なったことに喜びを示している。
甲本が率いるザ・クロマニヨンズは、2006年から活動するロックバンドだ。公式プロフィールでは、甲本がボーカル、真島昌利がギター、小林勝がベース、桐田勝治がドラムを担当している。「空腹と俺」も、甲本個人名義のソロ曲としてではなく、ザ・クロマニヨンズが主題歌を担当する形で発表された。
楽曲の魅力を読み解くうえでは、歌詞を映画の説明文として捉えるより、食べることへの衝動や、空腹を抱えながら前へ進む感覚に注目するとよい。映画にとっての空腹は旅の出発点であり、2人にとっては夢を追う生活の一部だった。その重なりが、40年という時間を経た再タッグに独自の意味を与えている。
なお、歌詞の全編や、制作時の詳細な録音工程などについては、公式に公表された情報の範囲を超えて断定できない。公開されている対談や報道から読み取れるのは、松重からの具体的な依頼と、甲本が今回の仕事を特別なものとして受け止めたこと、そして2人の共有体験が楽曲の背景にあったという点だ。
【2026年最新】松重豊と甲本ヒロトの現在、今後の共演は?
2026年10月現在、松重豊と甲本ヒロトは、それぞれ俳優・映像制作者、ロックミュージシャンとして活動を続けている。2人の近況を見ると、約40年前に夢を語り合った青年たちが、今もそれぞれの分野で表現を追求していることがわかる。
松重の公式サイトでは、2026年10月の最新情報として、Prime Videoで配信されるオリジナルドラマ『おいしいのつくりかた』が紹介されている。同作では松重が企画プロデュースや脚本、監督を担当。『劇映画 孤独のグルメ』で監督業に挑戦した松重が、映像制作の仕事を継続していることを示す動きだ。
一方、ザ・クロマニヨンズは2026年10月20日、ニューアルバム『Hola! Leopardo』を2027年1月20日に発売すると発表した。先行シングル「ジョニー・エスプレッソ」は2026年12月16日に発売予定で、2027年2月からは全国ツアーも予定されている。甲本を中心とするバンドの活動は、現在も新作リリースとライブを軸に続いている。
ここで注意したいのは、2025年の映画での共演が、今後も2人が定期的に共同制作することを意味するわけではないという点だ。2026年10月時点で確認できる活動情報からは、それぞれの仕事が継続していることはわかるものの、新たな共同作品の予定まで断定することはできない。
また、2人の友情についても、公に語られた対談や取材で確認できるのは、珉亭での出会い、若い頃の映画制作、ラジオ番組での共演、そして主題歌制作といったエピソードだ。現在の私的な交流の頻度や日常生活の詳細については、公開された情報だけではわからない。
2026年の最新情報を追う際は、本人の公式サイトやバンドの公式発表、映画の公式情報を基準にするのが確実だ。過去の対談映像やインタビューは、2人の関係を知るうえで貴重な資料だが、それ自体が新しい共演の発表を意味するわけではない。
【松重豊甲本ヒロト】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:松重豊と甲本ヒロトはどこで出会った?
A1:東京・下北沢の中華料理店「珉亭」で出会った。2人は19歳ごろ、同じ日にアルバイトを始めたと、本人たちの対談で振り返っている。
Q2:松重豊と甲本ヒロトは本当に40年来の友人?
A2:はい。約40年前のアルバイト仲間であり、松重が学生時代に制作した自主映画では甲本が主演を務めた。2025年の『劇映画 孤独のグルメ』では、甲本率いるザ・クロマニヨンズが主題歌を担当した。
Q3:「空腹と俺」は誰が歌っている?
A3:ザ・クロマニヨンズが担当している。ボーカルは甲本ヒロトで、同曲は2025年1月10日公開の『劇映画 孤独のグルメ』の主題歌として発表された。
Q4:松重豊が甲本ヒロトに主題歌を依頼した理由は?
A4:40年来の友人であり、若い頃に松重が撮ろうとした自主映画で主演を務めた人物だったことが大きい。松重は今回の映画を監督するにあたり、甲本に手紙で楽曲制作を依頼した。甲本自身も『孤独のグルメ』が好きだったことなどから、特別な仕事として引き受けたと報じられている。
Q5:甲本ヒロトは『劇映画 孤独のグルメ』に俳優として出演している?
A5:本作で確認できる役割は主題歌の制作・演奏であり、映画本編への俳優出演とは区別する必要がある。甲本が松重の学生時代の自主映画で主演を務めたことと、2025年の映画で主題歌を担当したことは、別の出来事だ。
Q6:2026年現在、2人の新しい共演予定はある?
A6:2026年10月時点で、確認できる主な共同プロジェクトは『劇映画 孤独のグルメ』の主題歌「空腹と俺」。松重は映像制作、ザ・クロマニヨンズは音楽活動を継続しているが、新たな共同作品の予定については公式発表で確認できる情報がない。
まとめ:松重豊と甲本ヒロトの友情が40年越しの共演につながった理由
松重豊と甲本ヒロトの関係は、下北沢の珉亭で同じ日にアルバイトを始めたことから始まった。映画監督を夢見た松重と、音楽の道を志した甲本は、生活のために働きながら将来を模索していた。その後、松重の自主映画で甲本が主演を務めたものの、作品は未完成に終わった。
約40年後、松重が『劇映画 孤独のグルメ』の監督・脚本・主演を務めることになり、甲本率いるザ・クロマニヨンズが主題歌「空腹と俺」を担当した。若い頃の未完の映画と、珉亭で共有した空腹の記憶が、今度は劇映画と音楽という形で結びついたのである。
このエピソードから見えてくるのは、長年の友情が単に昔を懐かしむためのものではなく、互いの仕事を理解し、必要な場面で力を貸し合う関係にもなり得るということだ。松重が甲本に依頼し、甲本が特別な仕事として応えた背景には、長い時間をかけて培われた信頼があった。
2026年も、松重は映像制作に取り組み、ザ・クロマニヨンズは新作とツアーを予定している。今後の共演については公式発表を待つ必要があるが、「空腹と俺」は、2人が歩んできた道のりと、若き日に共有した夢を現在へつないだ作品として記憶されるだろう。
【プロの結論】 松重豊と甲本ヒロトの物語を理解する鍵は、「40年来の友人」という肩書だけではない。若い頃に実現できなかった映画制作、珉亭での生活、そして互いの表現活動への敬意が、主題歌という具体的な仕事に結実した点にある。2人の関係を知るなら、過去の出会いを伝える対談と、実際に完成した「空腹と俺」の両方に注目したい。
参考にした主な資料
- テレビ東京の公式発表『劇映画 孤独のグルメ』主題歌決定のお知らせ
- 『週刊SPA!』2025年1月掲載、松重豊・甲本ヒロト特別対談
- GQ JAPANによる2人のインタビュー
- オリコンニュースによるスペシャル対談映像の報道
- 松重豊公式サイト、ザ・クロマニヨンズ公式情報(2026年10月時点)