2026年、VTuberグループ「ホロライブ」を運営するカバー株式会社が、米国の連邦裁判所で著作権侵害をめぐる訴訟を起こしたことが話題になっています。訴えられた相手は誰なのか、なぜ日本の企業が日本人の動画投稿者を米国で提訴したのか。検索されているのは、単なる炎上騒動の結末だけではなく、68本の動画をめぐる著作権問題と、DMCAに基づく削除申請・異議申し立ての仕組みです。
公開された裁判記録によると、カバー株式会社は2026年2月5日、米国カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に著作権侵害訴訟を提起しました。被告として記載されているのは、YouTubeチャンネル「マリアのVTuberにうず」の運営者として報じられた山下正樹氏です。2026年10月25日時点では、訴訟の提起や被告側の答弁などが確認できる一方、最終判決が出たとする公開記録は確認できません。
【訴訟相手は誰?】山下正樹氏と「マリアのVTuberにうず」の関係

ホロライブ訴訟の相手を知るうえで、まず押さえたいのが、裁判の当事者名とインターネット上で使われている活動名の違いです。
公開された米国の裁判記録では、原告はカバー株式会社、被告は「MASAKI YAMASHITA」と記載されています。事件名は「COVER Corporation v. Yamashita」で、2026年2月5日に提訴された著作権侵害事件です。公開記録上の事件情報では、米国著作権法17 U.S.C. §501に基づく請求として扱われています。
山下氏は、YouTubeチャンネル「マリアのVTuberにうず」の運営者として報じられています。また、インターネット上の記事や投稿では「バーチャルブッダ」という呼称も使われています。ただし、これらの活動名や通称と、裁判記録に記載された正式な当事者名は区別して理解する必要があります。
今回の訴訟は、一般に「ホロライブアンチ動画」と呼ばれるコンテンツをめぐって注目を集めました。しかし、法廷で争われている中心的な問題は、投稿者が批判的な意見を発信したこと自体ではなく、カバーが権利を持つと主張するキャラクター画像や映像などを、許諾なく使用したかどうかという著作権上の問題です。
批判動画や解説動画は、内容によって法的な評価が異なります。企業やタレントへの批判が直ちに違法になるわけではありません。一方で、批判を目的とする動画であっても、他者の著作物の使用方法によっては著作権侵害が問題になる可能性があります。この二つを混同すると、訴訟の争点を正しく理解できません。
【提訴までの経緯】68本の動画とDMCA削除申請で何が起きたのか
今回の裁判で重要なのは、動画の削除申請だけで問題が終わらず、米国の裁判所で争う段階に進んだことです。
カバー側の訴状を紹介した公開資料によると、同社はYouTubeを通じて著作権侵害の申し立てを行い、対象となる動画について削除措置を求めました。これに対し、投稿者側がDMCAに基づく異議申し立て通知、いわゆるカウンターノーティスを提出したことが、訴訟に至る重要な経緯として記されています。
この異議申し立ては、一般的な問い合わせや、YouTubeのコミュニティガイドラインに対する不服申し立てとは異なります。著作権侵害を理由に削除されたコンテンツについて、削除が誤りであるなどと主張し、復旧を求めるための法的手続きです。
YouTubeの公式ヘルプによると、必要な要件を満たしたカウンターノーティスが提出された場合、権利者には原則として米国の営業日で10日以内に、対象コンテンツの復旧を防ぐための法的措置を取った証拠を提出する機会が与えられます。所定の期間内に必要な証拠が提出されなければ、動画が復旧される可能性があります。
カバー側の訴状では、権利者としての証拠をYouTubeに提出していたにもかかわらず、投稿者側が侵害を否認する異議申し立てを行ったため、コンテンツの削除状態を維持するには法的措置を示す必要が生じた、という趣旨が説明されています。
つまり、訴訟に至った背景には、動画の権利関係をめぐる対立に加え、プラットフォームの削除制度と、異議申し立て後に必要となる法的対応があります。動画が削除されたという事実だけで、著作権侵害が裁判所によって確定したわけではありません。
【68本の動画とは?】ホロライブ20人分の著作物をめぐる主張
今回の訴訟で繰り返し取り上げられている数字が、68本の動画と20人のタレントです。カバー側の訴状をもとにした報道では、対象とされる動画には、ホロライブ所属タレント20人に関係するキャラクター画像や映像などが使用されていたとされています。
ここで注意したいのは、68本という数字が、裁判所によって侵害と認定された動画の数を意味するわけではないことです。これは、カバー側が訴訟で問題としている動画の数です。最終的にどの著作物について、どのような利用が侵害に当たるかは、当事者の主張や証拠、裁判所の判断によって決まります。
| 項目 | 内容 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 原告 | カバー株式会社 | ホロライブプロダクションを運営する企業 |
| 被告 | 山下正樹氏 | 公開裁判記録に記載された当事者名 |
| 提訴日 | 2026年2月5日 | 米国連邦地方裁判所への訴状提出日 |
| 対象とされる動画 | 68本 | カバー側が著作権侵害を主張している動画数 |
| 関係するタレント | 20人 | 訴状で問題とされたキャラクターやコンテンツの関係者 |
| 主な法的争点 | 著作権侵害の成否、審理する裁判所の適切性など | 動画の利用実態と、裁判所が今後判断する事項を区別する |
| 判決・賠償額 | 最終確定を確認できず | 請求額や法定上限と、実際に認められた金額は別 |
ホロライブのキャラクターは、単なる一般的な人物画像とは異なり、企業が管理するキャラクターデザインや関連コンテンツの一部です。映像の切り抜き、画像の転載、加工した画像の利用などは、それぞれ使用された著作物や利用方法によって法的評価が異なります。
動画の中で批評や論評を行っていたとしても、使用した画像や映像がすべて自動的に適法になるわけではありません。反対に、画像や映像が含まれているという理由だけで、すべての利用が違法になるわけでもありません。米国法では、フェアユースに該当するかなども、個別の事情に応じて検討されます。
したがって、今回の訴訟を理解する際は「アンチ活動だったから訴えられた」「68本すべての違法性が確定した」と単純化せず、何が使用され、どのような権利が主張され、裁判所が何を判断するのかを分けて見ることが大切です。
【なぜ米国で裁判?】カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所が選ばれた理由
ホロライブ訴訟で大きな疑問となっているのが、カバー株式会社も被告とされる投稿者も日本に関係しているのに、なぜ米国で裁判が起きたのかという点です。
その背景として重要なのが、DMCAに基づく異議申し立てと、YouTubeの運用手続きです。YouTubeの公式説明では、米国外に居住する投稿者がカウンターノーティスを提出する場合、YouTubeの所在地に関係する米国連邦地方裁判所の管轄に同意する旨など、所定の要件を満たす必要があります。
カバー側の訴状を紹介した公開資料でも、YouTubeが削除状態を維持するために法的措置の証拠を求めたことが、提訴の理由として説明されています。今回の手続きでは、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所が審理の場となりました。
ただし、DMCAに基づく異議申し立てをしたからといって、申し立てをした人が著作権侵害を認めたことになるわけではありません。また、米国の裁判所で訴訟が始まったからといって、原告の主張がすべて認められるわけでもありません。
この仕組みの重要な点は、削除を求める権利者と、削除に異議を唱える投稿者の双方に手続き上の権利があることです。権利者が削除を維持したい場合には法的措置が必要となることがあり、投稿者が異議を申し立てる場合にも、氏名や連絡先の提供など、軽視できない法的な影響が生じます。
米国で提訴された理由を考えるうえでは、企業と個人の国籍だけを見るのではなく、コンテンツを配信するプラットフォームの手続き、異議申し立ての内容、管轄に関するルールを合わせて確認する必要があります。
【2026年最新】判決は出た?被告側の答弁と10月時点の争点
2026年10月25日時点で重要なのは、訴訟が提起されたという事実と、最終的な判決が出たという事実を混同しないことです。
公開されている連邦裁判所の事件記録によると、山下氏は2026年7月30日に訴状への答弁書と抗弁を提出しています。これは被告側が訴訟手続きに応じたことを示すものであり、カバー側の主張が認められたことを意味するものではありません。
加えて、9月から10月にかけては、審理の場所などをめぐる手続きが焦点となりました。公開された手続き情報によると、山下氏側はフォーラム・ノン・コンビニエンス(forum non conveniens)を理由とする却下申立てを行い、カバー側も修正訴状の提出許可を求めています。
フォーラム・ノン・コンビニエンスとは、ある裁判所で訴訟を続けるよりも、別の裁判地で審理するほうが適切だと主張する際に問題となる法理です。今回の争点は、動画の著作権侵害があったかどうかという本案の問題だけではなく、どこで訴訟を進めるべきかという手続き上の問題にも及んでいます。
2026年10月9日付の手続き命令として公開情報に記録されているのは、却下申立てと修正訴状の提出許可申立てを、書面による審理に付すという内容です。10月15日と22日に予定されていた審問は取り消されました。この手続きは、カバー側の訴えそのものを棄却したという意味ではありません。
公開されている事件日程では、次回のケースマネジメント・カンファレンスは2026年11月19日に予定されています。これは訴訟の進行管理に関する会議であり、最終的な著作権侵害の判断を下す判決日と同じものではありません。
以上から、2026年10月25日時点で「カバーが勝訴した」「山下氏に賠償命令が下った」「訴訟が終結した」と断定することはできません。今後は、裁判地に関する申立てへの判断、修正訴状の扱い、その後の審理日程などが注目点になります。
【賠償金・訴訟費用・法的措置】カバーの対応と知っておきたい注意点
ホロライブ訴訟をめぐっては、巨額の賠償金が発生するのではないかという関心も集まっています。しかし、法律上の損害賠償の上限と、原告が実際に請求した金額、そして裁判所が最終的に認める金額は、それぞれ別のものです。
米国著作権法17 U.S.C. §504では、法定損害賠償について、原則として1作品につき750ドルから3万ドルの範囲が定められています。故意の侵害が立証され、裁判所が認定した場合には、1作品につき最大15万ドルまで増額される可能性があります。これは法律上の枠組みであり、今回の訴訟でその上限額が認められたことを示すものではありません。
また、対象とされる動画が68本だからといって、68に15万ドルを掛けた金額が自動的に賠償額になるわけではありません。法定損害賠償は、著作物の単位や請求の内容、侵害の状況などを踏まえて判断されます。動画の本数と、損害賠償の算定単位は必ずしも一致しません。
米国訴訟の費用についても、公開された裁判記録にある訴状提出手数料だけで総額を判断することはできません。今回の公開記録には、カバー株式会社が訴状を提出した際の手数料として405ドルが記載されていますが、これは訴訟全体の費用ではありません。弁護士費用、証拠の収集・翻訳、書面の作成、審理への対応などにかかる費用は別途発生し得ます。
一方、カバー株式会社は、この米国の著作権訴訟とは別に、所属タレントへの誹謗中傷や権利侵害に対して、発信者情報開示請求、民事訴訟、刑事手続きなどを進めてきました。
同社が2026年4月30日に公表した2025年度の対応報告によると、2025年4月1日から2026年3月31日までの1年間における法的対応件数は149件、X・YouTube・TikTokでの削除対応件数は1,411件でした。ただし、149件は訴訟や刑事事件を含む法的対応全体の件数であり、149件すべてが裁判での提訴を意味するわけではありません。
発信者情報開示請求は、匿名の投稿などについて、権利侵害が認められる場合に発信者の情報を特定するための法的手続きです。今回の米国訴訟は、動画の著作権侵害をめぐる事件であり、国内での誹謗中傷に対する開示請求や損害賠償請求と、法的な根拠や手続きが異なります。
そのため、「ホロライブ訴訟」と検索して見つかる情報を読む際は、著作権侵害の訴訟なのか、誹謗中傷に関する開示請求なのか、示談が成立した別件なのかを確認する必要があります。異なる事件の情報を混ぜてしまうと、誰が何を争っているのか、判決が出たのかどうかを誤って理解する原因になります。
【ホロライブ訴訟誰】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ホロライブ訴訟の相手は誰ですか?
A1:2026年2月5日に提起された米国の著作権侵害訴訟で、公開裁判記録に被告として記載されているのは山下正樹氏です。「マリアのVTuberにうず」の運営者として報じられ、インターネット上では「バーチャルブッダ」という呼称も使われています。
Q2:カバー株式会社はなぜ山下氏を訴えたのですか?
A2:カバー側は、ホロライブ所属タレント20人に関係する68本の動画について、著作権侵害があったと主張しています。YouTubeへの削除申請後、投稿者側がDMCAに基づく異議申し立てを行ったことが、提訴に至る経緯として公開資料で説明されています。
Q3:ホロライブ訴訟は2026年10月時点で判決が出ていますか?
A3:2026年10月25日時点で確認できる公開情報では、最終判決や確定した賠償額は確認できません。被告側の答弁書は提出され、裁判地などに関する申立ても進行しています。公開されている日程では、11月19日にケースマネジメント・カンファレンスが予定されています。
Q4:68本の動画すべてが著作権侵害と認定されたのですか?
A4:いいえ。68本はカバー側が侵害を主張している動画の数です。対象動画のすべてについて裁判所が侵害を認定したことを意味するわけではありません。
Q5:米国の著作権訴訟では最大いくらの賠償金が発生しますか?
A5:米国著作権法では、故意の侵害が立証された場合、法定損害賠償が1作品につき最大15万ドルとなる可能性があります。ただし、これは法律上の上限であり、今回の事件で認められた金額ではありません。動画数だけから最終的な賠償額を計算することもできません。
まとめ:ホロライブ訴訟の真相と今後の動向を見極めるポイント
ホロライブ訴訟の相手は誰なのかという疑問に対する答えは、米国の公開裁判記録に被告として記載された山下正樹氏です。カバー株式会社が2026年2月5日に提訴したこの事件では、ホロライブ所属タレント20人に関係する68本の動画をめぐり、著作権侵害の有無が争われています。
今回の提訴に至る背景には、YouTubeでの著作権削除申請と、それに対するDMCAの異議申し立てがありました。削除申請に異議を申し立てることは、単なる問い合わせとは異なる法的手続きです。その後の対応によっては、プラットフォーム上の削除問題が連邦裁判所での訴訟に発展することがあります。
2026年10月25日時点では、被告側の答弁書が提出され、裁判地などをめぐる手続きも進んでいますが、最終判決が出た段階ではありません。今後の動向を追う際は、裁判所の命令が何を判断したのか、当事者の主張にとどまる内容なのか、確定した判決なのかを区別することが欠かせない。
また、カバー株式会社による発信者情報開示請求や誹謗中傷対策の取り組みと、今回の米国著作権訴訟は、関連するテーマではあっても同一の事件ではありません。異なる事件の判決や示談内容を混同せず、公開裁判記録と公式発表に基づいて情報を整理することが、ホロライブ訴訟の真相と現在を理解するための判断基準になります。