ホロライブ中国をめぐる騒動は、2020年9月に発生した桐生ココ・赤井はあとの台湾発言をきっかけに、所属タレントへの活動自粛処分、運営会社カバー株式会社の声明をめぐる批判、そしてホロライブ中国(ホロライブCN)所属メンバー全員の卒業へと展開しました。ただし、問題の始まりは2020年だけではありません。2019年の中国進出と運営体制のトラブルを理解すると、騒動が事業全体に及ぼした影響も見えてきます。
2026年現在、ホロライブCNという独立したグループは活動を終了していますが、中国市場との関係が完全に断絶したわけではありません。bilibiliでの公式発信や中国のイベントへの参加も確認されています。ここでは、公式発表と報道をもとに、炎上の理由、活動終了までの時系列、元メンバーの卒業後、現在の中国との関係を整理します。
【結論】ホロライブ中国で何があった?騒動の全体像を解説

ホロライブ中国の騒動を理解するうえで押さえたいのは、台湾発言をめぐる炎上、運営会社の危機対応、中国市場での事業継続の難しさという3つの問題が重なったことです。
2020年9月24日、ホロライブ所属の赤井はあとがYouTubeの配信で自身のチャンネル視聴者の国・地域別データを紹介しました。翌25日には桐生ココも同様に視聴者データを取り上げ、その中に台湾が含まれていたことから、中国の一部視聴者の反発を招きました。
争点は、2人が台湾について政治的な主張を展開したことではありません。配信で紹介したYouTubeの分析データに「台湾」が表示されていたことが、中国政府の「一つの中国」という立場と衝突する形で受け止められた点にあります。
その後、カバーは2人の活動を3週間自粛させると発表しました。加えて、中国向けの声明で「一つの中国」の原則を支持する趣旨を示したため、今度は日本語圏や台湾を含む海外の視聴者からも批判が起きます。運営会社は、異なる地域に向けた説明の違いについて追加説明と謝罪を行いました。
この騒動の後、ホロライブCNの所属メンバー6人全員の卒業が発表され、2020年末までに中国向けグループとしての活動は終わりました。ただし、カバーは公式発表で「台湾発言だけが6人の卒業を決定した唯一の理由」と明言したわけではありません。騒動の影響と事業環境の悪化を区別して捉える必要があります。
【2019年の前史】bilibiliでの人気と中国進出のつまずき
ホロライブは、最初から中国市場と対立していたわけではありません。むしろ、騒動が起きる前は中国の動画共有プラットフォーム「bilibili」で大きな支持を集めていました。
カバー株式会社は2019年1月、bilibili運営会社との正式契約を発表しました。当初はホロライブ所属VTuber14人と公式チャンネルの計15チャンネルを開設し、中国語字幕付き動画の配信、ライブ配信の同時中継、現地ファンからの投げ銭などを展開する計画でした。
2019年4月15日のカバー公式発表によると、ホロライブ所属VTuberのbilibiliにおけるファン数は合計150万人を突破。白上フブキ、湊あくあ、夏色まつり、赤井はあとなどが人気ランキング上位に入っていました。当時の中国市場は、海外展開を進めるうえで大きな成長機会だったのです。
一方、2019年7月には運営体制を揺るがす別の問題が発生しました。中国展開を支援していた提携企業の担当者が、京都アニメーション放火事件が起きた当日に不適切な発言をしたとして、その内容がネット上で拡散。カバーは7月21日、当該担当者が所属する企業との契約を解消したと発表しました。
同社は同じ発表で、運営資金の不当な着服に関する投稿について事実ではないと説明し、所属VTuberへのセクハラについても、本人たちへの聞き取りで事実がなかったことを確認したとしています。つまり、ネット上で流れた疑惑のすべてが事実だったわけではありません。
この一件は、中国市場での運営において、現地パートナーとの連携や情報管理、ファンコミュニティとの信頼関係が重要であることを示しました。2020年の台湾発言騒動は突然起きた問題でしたが、それ以前から運営上の課題が存在していたことも注目です。
カバーの2019年1月・7月の公式発表と、同年4月の実績発表からは、中国市場が当初は成長領域として期待されていたこと、そして現地運営の継続には慎重な対応が求められていたことが読み取れます。
【2020年の炎上】桐生ココ・赤井はあとの台湾発言と公式対応
騒動の直接的なきっかけは、2020年9月24日から25日にかけて行われた2人の配信です。問題となったのは、YouTubeが提供するチャンネル分析データに表示された視聴者の国・地域別の割合でした。
赤井はあとの配信で何が起きたのか
赤井はあとは9月24日の配信で、YouTubeの分析画面を参照しながら視聴者の構成を紹介しました。報道によると、当時の配信では日本が37%、米国が11%、台湾が7%という割合が取り上げられています。
このデータの紹介が中国の一部視聴者から批判され、bilibiliでの配信にも影響が出ました。問題は、視聴者の所在地を示すプラットフォームの表示が、台湾の政治的地位に関する立場表明として解釈されたことです。
翌日の桐生ココの配信で騒動が拡大
9月25日には桐生ココも自身の配信で視聴者データを紹介し、台湾が表示されていることが再び問題視されました。これを受け、bilibili上での配信権限が停止されるなど、批判はさらに広がりました。
2人の配信は、台湾の政治的地位をめぐる主張を目的としたものではなく、チャンネルの視聴者層を紹介する内容でした。しかし、中国では台湾を独立した国として扱う表現が強い政治的反発を招き得ます。プラットフォームの表示をそのまま読み上げる行為が、国・地域の認識に関する問題へと発展したのです。
9月27日の活動自粛発表と「一つの中国」声明
カバーは9月27日、2人について、視聴者データの公開や一部地域への配慮に欠けた発言があったとして、3週間の活動自粛を発表しました。同社は統計データの公開・二次利用を規約上の問題として説明し、ガイドラインに関する指導を行う方針を示しました。
同時に、中国向けの声明では、中国の主権と領土保全を尊重し、「一つの中国」の原則を支持する趣旨が示されました。この対応は中国側の反発を抑える意図があった一方、日本語圏や台湾を含む海外の視聴者からは、タレントへの処分や声明の内容に対する批判を招きました。
9月30日、カバーは追加説明を発表し、日本向けと中国向けの説明の違いが混乱を招いたことを謝罪しました。ITmediaの報道によると、同社は中国現地の協力会社とも協議したうえで、タレントや社員の安全を守るために強い表現を含む中国向け声明が必要だと判断したと説明しています。経営責任を明確にする対応や、コンプライアンス委員会の設置も公表されました。
その後、2人は3週間の活動自粛期間を経て、2020年10月19日に活動を再開しました。騒動の影響は配信の停止だけにとどまらず、運営会社の危機管理と国・地域ごとのコミュニケーションのあり方にも及びました。
【時系列まとめ】ホロライブCNの活動終了までに何が起きた?
ホロライブ中国の活動終了は、台湾発言騒動の直後に一日で決まったものではありません。2019年の中国進出、運営体制の見直し、2020年の炎上、所属メンバーの卒業発表を経て、段階的に進みました。
| 時期 | 出来事 | 確認できる事実・意味 |
|---|---|---|
| 2019年1月 | bilibiliとの正式契約 | 公式チャンネルの開設、中国語字幕付き動画や同時配信などを開始。 |
| 2019年4月 | 中国での人気拡大 | カバー公式発表で、bilibiliのファン数合計150万人突破を公表。 |
| 2019年7月 | 中国展開の提携企業との契約解消 | 提携企業担当者の不適切な発言を受け、運営体制の見直しへ。 |
| 2019年9月以降 | ホロライブCNの活動 | 夜霧、Civia、Spade Echoらが中国向けグループとして活動。 |
| 2020年3月以降 | 2期生が活動開始 | Artia、Doris、Rosalynが加わり、所属メンバーは6人に。 |
| 2020年9月24〜25日 | 台湾発言騒動 | 赤井はあと、桐生ココの視聴者データ紹介が政治的な論争に発展。 |
| 2020年9月27〜30日 | 活動自粛と追加説明 | 2人が3週間の活動自粛。中国向け声明と日本向け説明の違いも問題化。 |
| 2020年10月19日 | 2人が活動再開 | 3週間の活動自粛期間を経て、桐生ココと赤井はあとが復帰。 |
| 2020年11月12〜16日 | CNメンバー全員の卒業が決定 | 当初の5人に続きSpade Echoの卒業も発表され、6人全員の卒業が明らかに。 |
| 2020年11〜12月 | 所属メンバーが順次卒業 | 12月27日のRosalynの卒業までに、旧ホロライブCNの所属メンバー全員が活動を終了。 |
| 2023年8月 | bilibili公式チャンネルが更新 | 長期間の更新停止を経て、公式動画の投稿が再開されたと報道。 |
| 2026年7月 | Bilibili World 2026に参加 | 公式アカウントが出展やグッズ販売、hololive IDのステージ参加を告知。 |
卒業日については、カバーの2020年11月12日および16日の公式発表で確認できます。Civiaは11月18日、Artiaは11月19日、Spade Echoは11月21日、夜霧は12月20日、Dorisは12月26日、Rosalynは12月27日に卒業予定とされました。ArtiaとSpade Echoについては、11月16日の発表で日程が明らかにされています。
この経過で重要なのは、ホロライブCNの終了が、会社から「台湾発言が原因で解散する」と単純に発表されたわけではないことです。公式に確認できるのは、騒動の発生、運営会社の対応、6人の卒業発表という一連の事実です。
【撤退の理由】ホロライブ中国はなぜ活動を続けられなかったのか
ホロライブCNの活動終了を理解するには、台湾発言だけでなく、事業運営と政治的リスクの両面を見る必要があります。
1.政治的に敏感な問題が配信の内容に直結した
VTuberのライブ配信は、台本のある映像作品と異なり、リアルタイムの会話や画面表示を通じて予期しない論争が起こり得ます。今回のように、プラットフォームの分析データを紹介するだけでも、国・地域の扱いが政治的な立場表明と受け取られる場合があります。
中国市場で活動するには、配信内容だけでなく、字幕、切り抜き動画、現地の配信サービス、公式声明など、多くの接点で地域ごとの事情に配慮しなければなりません。炎上後の説明が地域ごとに異なったことで、企業の対応そのものも批判の対象になりました。
2.タレントの安全と事業継続の両立が難しくなった
カバーは2020年9月の追加説明で、タレントや社員の安全を守るために中国向け声明を作成した経緯を説明しました。一方で、タレントに対する誹謗中傷などが発生し、運営会社はその後も対応を迫られました。
事業を継続するには、現地ファンとの関係を保つだけでなく、所属タレントが安心して活動できる環境を維持する必要があります。政治的な論争が繰り返されれば、配信の継続、ブランドの信頼、現地パートナーとの関係にも影響が及びます。
3.海外事業の採算性と運営体制の課題
2020年11月、ホロライブCNの全員卒業が発表された際、カバー代表の谷郷元昭氏は海外事業の採算性や、展開する地域の人々の感情に配慮する必要性に言及しました。海外展開には大きな可能性がある一方、現地の事情を踏まえた運営が欠かせないという認識です。
したがって、中国市場からの事実上の縮小を、単に「台湾発言で炎上したから」と説明するのは不十分です。政治的なリスク、現地での運営体制、タレント保護、海外事業の採算性などが重なり、継続的な展開の難しさが増したと見るのが妥当です。
4.「中国市場から完全撤退した」という理解にも注意
ホロライブCNの活動終了と、カバーが中国向けのコンテンツ展開を一切やめたことは同じではありません。旧CNメンバーの卒業によって独立したグループは終了しましたが、その後も公式チャンネルでの発信やイベントへの参加が再び確認されています。
つまり、終了したのは旧ホロライブCNというグループであり、中国のファンとの接点すべてが永久に消滅したわけではないという区別が大切です。
【ホロライブCNメンバーの卒業後】6人はどうなった?
ホロライブCNには、1期生の夜霧、Civia、Spade Echoと、2期生のArtia、Doris、Rosalynが所属していました。全員が2020年11月から12月にかけて卒業し、ホロライブCNとしての活動を終えています。
卒業後の進路については、個人活動や別名義での配信が話題になることがあります。ただし、卒業後の活動名義や所属を、本人の公表なしに旧ホロライブCNのメンバーと結び付ける情報には注意が必要です。カバーの卒業発表は、所属グループからの卒業日を知らせるものであり、その後の活動を一括して保証・説明するものではありません。
各メンバーについて公式に確認できる卒業日は次のとおりです。
- Civia(シビア):2020年11月18日
- Artia(アティア):2020年11月19日
- Spade Echo(黒桃影):2020年11月21日
- 夜霧(Yogiri):2020年12月20日
- Doris(ドリス):2020年12月26日
- Rosalyn(ロサリン):2020年12月27日
卒業日と活動終了日が混同されるケースや、別名義で活動しているという推測が流れることもあります。元メンバーの現在を調べる場合は、本人が公表している配信チャンネルやSNS、公式発表を基準にすることが大切です。確認できない転生先を確定情報として扱うと、本人の意向と異なる情報を拡散してしまう可能性があります。
また、桐生ココ自身も2021年7月にホロライブを卒業していますが、その卒業を2020年の中国騒動に対する処分と同一視することはできません。2人の台湾発言に対する3週間の活動自粛と、桐生ココのその後の卒業は、別々の出来事として整理する必要があります。
【2026年最新】ホロライブと中国の関係は現在どうなっている?
2026年現在、旧ホロライブCNは復活していません。しかし、中国向けの公式コンテンツ展開は再び確認できるようになっています。
bilibili公式チャンネルの更新が再開
2023年8月には、約3年にわたって更新が止まっていたホロライブのbilibili公式チャンネルで動画が投稿され、注目を集めました。この動きは、ホロライブCNの復活発表ではなく、既存の公式チャンネルを通じたコンテンツ発信の再開として捉えるべきものです。
2024年には中国向けの展開方針にも言及
カバーは2024年6月のグローバル展開方針で、北米・東南アジアを中心とした展開に加え、東アジアや欧州などでも現地イベントや現地プラットフォームを活用したコンテンツ展開を進める方針を示しました。同年の株主総会に関する公開記録でも、bilibiliでの配信やイベント出展について、会社主導で実施していることが説明されています。
このことから、旧CNの終了後も、中国のファンへコンテンツを届けること自体が完全に放棄されたわけではないと分かります。ただし、過去のように中国向けの独立グループを運営することと、既存の公式コンテンツを現地プラットフォームで配信することは別の事業形態です。
2026年にはBilibili Worldへの参加も告知
2026年6月、ホロライブの公式bilibiliアカウントは、7月10日から12日に上海で開催されたBilibili World 2026への出展を告知しました。告知には、公式グッズの販売や、hololive IDメンバーによる特別ステージへの参加も含まれていました。
これは、2026年時点で中国のファンとの接点が残っていることを示す具体的な動きです。一方、これをもって旧ホロライブCNが再結成された、あるいは中国向けの新しい独立支部が復活したと判断することはできません。
現状を整理すると、ホロライブと中国の関係は「完全撤退」でも「旧体制への全面復帰」でもありません。旧CNというグループは終了したまま、公式コンテンツやイベントを通じた中国向けの展開が続いている状態です。
【ホロライブ中国何があった】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ホロライブ中国が炎上した最大の理由は何ですか?
A1:2020年9月、桐生ココと赤井はあとがYouTubeの視聴者データを紹介し、その中に台湾が表示されていたことが、中国の一部視聴者の反発を招きました。その後、カバーの活動自粛処分と、中国向け・日本向けの声明の違いも批判の対象になりました。
Q2:ホロライブCNのメンバーは全員卒業したのですか?
A2:はい。Civia、Artia、Spade Echo、夜霧、Doris、Rosalynの6人全員が2020年11月から12月にかけて卒業しました。これにより、旧ホロライブCNとしての活動は終了しました。
Q3:2026年現在、ホロライブは中国から完全撤退したのですか?
A3:旧ホロライブCNという独立グループは終了していますが、中国向けの公式発信やイベント参加は確認されています。2026年にはBilibili Worldへの出展も告知されており、中国市場との接点がすべて失われたわけではありません。
まとめ:ホロライブ中国騒動の真相と今後を見極めるポイント
ホロライブ中国をめぐる騒動は、2020年9月の台湾発言を直接のきっかけとして、桐生ココと赤井はあとの活動自粛、カバーの声明をめぐる批判、そしてホロライブCNの全員卒業へとつながりました。しかし、その背景には、2019年からの中国展開と現地運営体制の課題、政治的に敏感な問題への対応、タレントの安全確保、海外事業の採算性など、複数の要因がありました。
また、ホロライブCNの活動終了を「中国との関係が永久に断絶した」と捉えるのも正確ではありません。2023年以降のbilibili公式チャンネルの更新や、2026年のBilibili Worldへの参加告知からは、独立支部の再建とは異なる形で、中国のファンに向けたコンテンツ展開が続いていることが分かります。
この騒動を理解するうえで重要なのは、配信上の発言、運営会社の公式対応、メンバーの卒業、現在の中国向け事業をそれぞれ区別することです。炎上の原因を単一の発言だけに求めたり、ネット上の推測だけで元メンバーの現在を断定したりするのではなく、公式発表と確認できる活動実績を基準に整理すれば、ホロライブと中国の関係がどのように変化してきたのかを、より正確に把握できます。