2026年2月、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのフィギュアスケート・ペアフリーで、日本の三浦璃来選手と木原龍一選手による「りくりゅう」が、ショートプログラム(SP)5位から劇的な逆転優勝を果たしました。フリーの得点は158.13点、合計231.24点。国際スケート連盟(ISU)の公式記録で現行採点方式のフリー歴代最高得点を更新し、日本ペア史上初のオリンピック金メダルを獲得しました。
一方、検索結果などで見かける「フリー143.31点」という数字は、今回のミラノ・コルティナ五輪における2人の公式フリー得点とは一致しません。正しい記録は158.13点です。なぜSP5位から頂点に立てたのか。得点の内訳、ライバルとの比較、町田樹さんが解説した「三位一体」の視点から、逆転劇の本質を読み解きます。
【2026年最新結果】りくりゅうはフリー158.13点で金メダル

ミラノ・コルティナ五輪のペアフリーは、現地時間2026年2月16日、日本時間17日に実施されました。前日のショートプログラムで5位だった三浦璃来・木原龍一組は、フリーで158.13点を記録。合計231.24点まで得点を伸ばし、逆転で頂点に立ちました。
ISUの公式最終結果によると、2位はジョージアのアナスタシア・メテルキナ/ルカ・ベルラワ組で221.75点、3位はドイツのミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン組で219.09点でした。SP首位のドイツ組がフリーで4位に後退する一方、りくりゅうはフリー1位の演技で順位を一気に押し上げました。
日本のフィギュアスケートは、シングル種目で数々のオリンピックメダリストを輩出してきました。しかし、ペア種目では五輪の表彰台に届いていませんでした。今回の金メダルは、単なる日本勢の優勝ではなく、長年の課題だったペア競技で歴史を塗り替えた結果です。
なお、フリー143.31点という数字を今回の五輪の記録として扱うのは正確ではありません。ISUの大会結果と最高得点統計が示している記録はフリー158.13点、合計231.24点です。検索時には、フリー単独の得点と合計得点、さらには別大会のスコアを混同しないことが大切です。
【SP5位からどう逆転した?】得点差を覆したフリーの圧巻の演技
りくりゅうの逆転劇を理解するには、SP終了時の順位だけでなく、フリーでどれだけ得点を伸ばしたかを見る必要があります。ペア競技はSPとフリーの合計得点で順位が決まるため、SPで出遅れても、フリーでライバルを大きく上回れば逆転は可能です。
今回のりくりゅうは、SPでミスが出て5位となりました。首位のハーゼ/ボロディン組に対して約6.9点の差を抱えた状態でフリーを迎えましたが、フリーでは158.13点を獲得。ドイツ組の139.08点を19.05点上回り、SPでの遅れを十分に取り戻しました。
主な上位ペアの結果を整理すると、逆転の規模がはっきりします。
| 順位 | ペア | SP順位 | フリー得点 | 合計得点 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 三浦璃来/木原龍一(日本) | 5位 | 158.13点 | 231.24点 |
| 2位 | メテルキナ/ベルラワ(ジョージア) | 2位 | 146.29点 | 221.75点 |
| 3位 | ハーゼ/ボロディン(ドイツ) | 1位 | 139.08点 | 219.09点 |
| 4位 | パブロワ/スビアチェンコ(ハンガリー) | 4位 | 141.39点 | 215.26点 |
| 5位 | 隋文静/韓聡(中国) | 6位 | 135.98点 | 208.64点 |
出典:国際スケート連盟(ISU)「Olympic Winter Games 2026」ペア競技公式結果。得点は大会の公式記録。
注目したいのは、りくりゅうが2位のジョージア組にもフリーで11.84点の差をつけたことです。最終的な金メダルと銀メダルの差は9.49点でした。SPでの失点を埋めるだけでなく、フリーでライバルたちを大きく引き離す演技を披露したことが、逆転優勝の決定打になりました。
もちろん、相手のミスだけで勝利が決まったわけではありません。上位ペアにはフリーで得点を落とした組もありましたが、りくりゅう自身が高い難度の技を安定して成功させ、加点を積み上げたことが不可欠でした。逆転劇の核心は、他の選手の失敗を待つのではなく、自分たちの演技で勝利に必要な点数を獲得した点にあります。
【ペアフリーの得点の仕組み】158.13点はどう生まれたのか
フィギュアスケートのフリーは、ジャンプの成功数だけで順位が決まる競技ではありません。ペアでは、投げられた選手が跳ぶスロージャンプ、2人で行うツイストリフト、リフト、スピン、デススパイラルなど、異なる種類の技を組み合わせます。技の難度に加え、実施の質や演技全体の表現も採点対象です。
ISUの公式リザルトによると、りくりゅうのフリー158.13点は、技術点82.73点と演技構成点75.40点の合計です。減点は0点でした。この内訳を見ると、得点が伸びた理由をより具体的に把握できます。
技術点(TES)82.73点は、ジャンプやリフトなどの技の基礎点に、出来栄え点(GOE)を加えて算出されます。難しい技を入れるだけでは高得点にはなりません。着氷や空中姿勢、回転、リフトの安定性など、実施の質が評価されて初めて大きな加点につながります。
スポーツナビに掲載された町田樹さんの解説では、りくりゅうのフリーは技の基礎点62.50点に対し、GOEで20点以上の加点を得た点が紹介されています。これは、技の難度を確保するだけでなく、一つひとつの要素を高い品質で実施したことを示す数字です。
一方、演技構成点(PCS)75.40点は、技術面とは別に、プログラムの構成、表現、スケーティング技術などを評価する得点です。ISUの結果表では、りくりゅうは構成、プレゼンテーション、スケーティングスキルの各評価で高い水準を記録しました。
技術点だけが突出しても、演技構成点だけが高くても、158.13点という得点には届きません。高難度の技を成功させ、その技をプログラムの流れに自然に組み込み、音楽の魅力まで引き出したことが、歴代最高得点につながりました。
【町田樹が分析】りくりゅうの金メダルを支えた「三位一体」
2026年2月17日、スポーツナビに掲載された町田樹さんの解説は、りくりゅうの強さを「技術」「芸術」「精神力」の三位一体という観点から分析しました。町田さんはソチ五輪の男子シングルで5位に入賞した経験を持ち、現在は國學院大學の准教授として研究活動を行うとともに、フィギュアスケートの解説にも携わっています。
この分析の重要な点は、金メダルの理由を単純なジャンプの成功や精神論だけに求めていないことです。3つの要素が互いに支え合い、フリー全体の完成度を高めていたと捉えています。
第一は、技術の高さです。りくりゅうはスケーティングの速度を維持したまま、高難度のリフトやスロージャンプなどを実施しました。スピードが落ちず、技から次の動作へ滑らかにつながることで、演技全体の勢いが生まれます。町田さんの解説では、基礎点だけでなくGOEの大きな加点が、その技術的優位性を裏付けるものとして取り上げられています。
第二は、芸術性です。フリーのプログラム「グラディエーター」では、力強い滑りと疾走感が壮大な音楽と結びつきました。町田さんが注目したのは、プログラム終盤まで滑りの重厚さを保ち、音楽との調和を崩さなかった点です。高難度の技を成功させるだけでなく、作品としての一体感を維持したことが、演技構成点にも反映されました。
第三は、精神力です。SPでミスが出た後も、フリーで自分たちの力を発揮する必要がありました。スポーツナビの解説記事では、木原選手がSP後に「必ず帰ってきます」と語り、フリーで結果を残した経緯が紹介されています。大舞台で失敗を引きずらず、次の演技に集中する力も、逆転優勝を支えた要素でした。
技術が得点を生み、芸術性がプログラムを一つの作品として完成させ、精神力がその実力を本番で発揮させる。この3つがそろったからこそ、りくりゅうの演技は歴代最高得点と金メダルの両方につながったのです。
【りくりゅうが金メダルを獲得した理由】逆転を可能にした3つの強み
今回の結果をさらに掘り下げると、金メダルを支えた要因は、単にフリーで自己最高得点を出したことだけではありません。得点の取り方、ペアとしての連動性、そして競技経験の積み重ねが、ひとつの演技に結実していました。
1. 難度と出来栄えを両立したこと。ペアフリーでは、高難度の技を選択しても、実施に乱れが出れば加点を得にくくなります。反対に、難度を抑えて失敗を避けるだけでは、上位争いで必要な得点を確保しにくい場合があります。りくりゅうは高い基礎点を持つ構成を、高い出来栄えで実施したことで、技術点を82.73点まで伸ばしました。
2. 2人の動きが一体化していたこと。ペア競技は、個々の技術だけで成立するものではありません。ツイストやリフト、スロージャンプでは、2人のタイミングや距離感、空中での動作、着氷後の流れが結果を左右します。互いの動きを正確に合わせ、演技の勢いを保つことが、技の成功とプログラム全体の完成度を同時に高めます。
3. SPの失敗をフリーに持ち込まなかったこと。五輪のような大舞台では、前の演技で生じた失点が心理的な負担になり得ます。しかし、SPの結果が悪かったからといって、フリーでも同じ結果になるとは限りません。りくりゅうはフリーで自分たちの強みを出し切り、必要な得点を獲得しました。木原選手の言葉と実際の演技結果が示すのは、逆境から立て直す力も競技力の一部だということです。
加えて、今回の金メダルは、2人だけの物語にとどまりません。町田さんの解説では、日本のペア競技の発展に貢献した高橋成美さんの存在にも言及されています。日本のペアが世界の頂点に立つまでには、現役選手の努力に加え、競技を支えてきた先駆者や指導者の積み重ねがありました。今回の優勝は、そうした競技基盤の成長を示す成果でもあります。
【ペアフリー歴代最高得点】記録を正しく理解するためのポイント
「歴代最高得点」という言葉を理解する際には、どの種目の、どのプログラムの記録なのかを確認する必要があります。ペア競技にはSP、フリー、両者を合算した総合得点があり、それぞれ異なる記録です。
2026年10月25日時点のISU「Progression of Highest Scores Statistics」では、ペアフリーの最高得点は三浦璃来/木原龍一組の158.13点です。2位はアナスタシヤ・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組の157.46点、3位は隋文静/韓聡組の155.60点となっています。
ここで注意したいのは、フィギュアスケートでは採点方式の変更により、異なる時代の得点を単純に横並びで比較できない場合があることです。りくりゅうの158.13点は、ISUが公表する現行採点方式の最高得点記録として評価するのが適切です。
また、143.31点という数字を見かけた場合は、それがフリー単独なのか、合計得点なのか、別の大会の結果なのかを確認しましょう。今回のミラノ・コルティナ五輪については、ISU公式結果と最高得点統計の双方が158.13点を示しています。世界記録を語るうえでは、数字の大きさだけでなく、種目・大会・採点方式をそろえて比較することが欠かせない。
【フィギュアスケートペアフリー】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年ミラノ・コルティナ五輪で、りくりゅうのフリー得点は何点ですか?
A1:三浦璃来選手と木原龍一選手のフリー得点は158.13点です。SPの得点と合算した総合得点は231.24点で、金メダルを獲得しました。
Q2:りくりゅうはSP5位から、なぜ逆転優勝できたのですか?
A2:フリーで158.13点を獲得し、SPでの遅れを取り戻したためです。高難度の技を高い出来栄えで成功させ、技術点82.73点、演技構成点75.40点を記録。減点0点で演技をまとめたことが、逆転の大きな要因になりました。
Q3:フリー143.31点が世界歴代最高得点という情報は正しいですか?
A3:今回の五輪におけるりくりゅうの公式フリー得点は143.31点ではなく158.13点です。ISUの最高得点統計でも、158.13点が現行採点方式におけるペアフリーの最高記録として掲載されています。
【プロの結論】りくりゅうの金メダルが示したもの
2026年ミラノ・コルティナ五輪のペアフリーは、SP5位からの逆転という劇的な展開だけでなく、競技の本質を示した演技として記憶される結果になりました。りくりゅうはフリー158.13点、合計231.24点で金メダルを獲得。日本のペア競技にとって初の五輪金メダルと、現行採点方式におけるフリー歴代最高得点を同時に手にしました。
この演技を正しく評価するには、得点だけでなく、その内訳を見ることが大切です。技術点82.73点と演技構成点75.40点、そして減点0点という結果は、技の難度、実施の質、プログラムの表現が高い水準でかみ合ったことを示しています。町田樹さんが解説した「技術・芸術・精神力」の三位一体は、その完成度を理解するための有効な視点です。
そして、逆転優勝の教訓は、SP5位という順位が最終結果を決めるわけではないということです。前半の失点を取り戻すには、後半で必要な得点を計算し、自分たちの強みを最大限に発揮しなければなりません。りくりゅうは、その課題を世界最高水準の演技で乗り越えました。
2026年のペアフリーを振り返る際には、公式記録の158.13点と231.24点、SP5位からの逆転、そして「三位一体」の完成度という3つの視点を押さえておきたいところです。それらを合わせて見ることで、りくりゅうの金メダルが、単なる順位の逆転ではなく、日本のペア競技の歴史を前進させた成果だったことが理解できます。