ベロの根元が痛い、舌の付け根がヒリヒリする、飲み込むたびに喉の奥まで痛む――。こうした症状の原因は、口内炎や粘膜の傷だけでなく、扁桃炎、舌咽神経痛、まれに中咽頭がんなど、さまざまな病気が考えられます。
舌の付け根は自分では観察しにくく、痛みを感じている場所が舌なのか、扁桃なのか、喉の奥なのかを区別するのも簡単ではありません。2026年現在、受診の判断で大切なのは、痛む場所だけでなく、痛み方、発熱の有無、飲み込みにくさ、症状が続いている期間を合わせて確認することです。
【原因を解説】ベロの根元が痛いときに考えられる主な病気と理由

「ベロの根元」とは、一般に舌の奥側、喉につながる部分を指す表現です。ただし、日常会話でいう舌の付け根には、舌の後方だけでなく、その両側にある扁桃や喉の奥の違和感も含まれることがあります。
そのため、痛みを感じる場所だけで原因を決めつけるのは禁物です。代表的な原因は、次のとおりです。
- 口内炎・粘膜の傷:食事中に舌を噛んだ、硬い食品が当たった、熱い飲食物でやけどした、歯の尖った部分が擦れたなどの刺激で痛みが生じる。
- 扁桃炎:舌の付け根の両側にある口蓋扁桃に炎症が起き、喉の痛みや嚥下痛、発熱などが現れる。
- 舌咽神経痛:舌の奥や喉の奥から耳にかけて、電気が走るような鋭い痛みが突然起こる。
- 舌炎・口腔乾燥:舌の粘膜が炎症を起こしたり、唾液が減って粘膜が刺激に弱くなったりすることで、ヒリヒリ感や灼熱感が生じる。
- 栄養不足や貧血:ビタミンB12や鉄分の不足などにより、舌の炎症や痛みが現れることがある。
- 中咽頭がんなど:喉の奥の病変によって、持続する痛み、飲み込みにくさ、耳の痛み、首のしこりなどが現れることがある。
日本口腔外科学会の「口腔外科相談室」では、歯の尖った部分や合わない義歯などによる刺激も、舌の痛みの原因として挙げられています。舌の表面に目立つ傷がなくても、歯や口腔内の状態が関係している可能性があります。
また、DentaLifeが2025年9月1日に公開した舌の付け根の口内炎に関する記事では、付け根部分の発生について「舌全体の中で約2割」と紹介しています。ただし、この数字は公的な疫学統計と同一視できるものではありません。発生率の数字よりも、実際の症状や経過を重視する必要があります。
【口内炎の見分け方】アフタ性・カタル性・ウイルス性の違いと治し方
ベロの根元に口内炎ができると、食べ物が触れたときだけでなく、舌を動かしたり、飲み込んだりしたときにも痛むことがあります。舌の奥は自分で見えにくいため、口内炎が原因だと思っていても、実際には喉や扁桃の炎症であるケースも考えられます。
口内炎は、原因や見た目によっていくつかの種類に分けられます。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の解説などを参考に、主な違いを整理します。
アフタ性口内炎は、円形や楕円形の白っぽい潰瘍ができ、その周囲が赤くなるのが特徴です。食べ物や飲み物が触れるとしみることがあり、ストレス、疲労、粘膜の損傷、栄養状態などが関係する場合があります。
カタル性口内炎は、物理的な刺激などによって粘膜が赤くなったり、腫れたりするタイプです。歯の尖り、義歯の不具合、やけどなどが原因になることがあります。アフタ性のような境界のはっきりした潰瘍ではなく、広い範囲に赤みや炎症が出る場合もあります。
ウイルス性口内炎では、ヘルペスウイルスなどの感染によって、水疱や複数の潰瘍、強い痛みが生じることがあります。発熱や歯ぐきの炎症などを伴う場合もあり、一般的な口内炎と同じ対処だけでは不十分なことがあります。
なお、カンジダ性口内炎は真菌による感染症であり、ウイルス性口内炎とは別の分類です。白い苔のような付着物が見られる場合などは、自己判断で薬を選ばず、医療機関で確認してもらいましょう。
一般的な口内炎は、1〜2週間程度で自然に改善することが多いとされています。痛みが軽く、症状が限られた範囲にとどまっている場合は、刺激を避けて口腔内を清潔に保ち、経過を観察できることもあります。
ただし、舌の付け根は患部を直接確認しにくい場所です。白い部分が見えたからといって、必ずしも口内炎とは限りません。硬いしこりがある、出血する、範囲が広がる、2週間以上治らないといった場合は、歯科・口腔外科や耳鼻咽喉科を受診してください。
【痛み方で確認】片側だけ痛い・飲み込むと痛い・ヒリヒリする場合
舌の付け根の痛みを見分けるうえでは、どのような動作で痛むのか、痛みがどれくらい続くのかも重要な手がかりになります。ただし、症状だけで病名を確定することはできません。
片側だけが痛い場合は、左右どちらかの扁桃炎、局所的な傷や潰瘍、舌咽神経痛などが考えられます。片側の痛みだけで、すぐに重大な病気と判断する必要はありません。一方、片側の痛みが長引く、首にしこりがある、舌を動かしにくいなどの症状を伴う場合は、早めの診察が必要です。
飲み込むと痛い場合は、口内炎の刺激に加え、扁桃炎や咽頭の炎症なども候補になります。発熱、喉の腫れ、強い倦怠感がある場合は、感染症の可能性を考えて耳鼻咽喉科を受診しましょう。
数秒から数十秒ほどの鋭い痛みが突然走る場合は、舌咽神経痛の特徴と重なることがあります。東京慈恵会医科大学附属病院の脳神経外科では、飲み込む、話す、あくびをするといった動作で、喉の奥から耳にかけて電気が走るような痛みが誘発されることがあると説明しています。
舌咽神経痛は比較的まれな病気です。口腔外科docでも、100万人に数人程度とされるまれな疾患として紹介されています。ただし、この数値は同サイトの説明に基づくもので、個々の痛みから発症確率を判断するためのものではありません。
舌がヒリヒリする、赤く滑らかになった、手足もしびれる場合は、舌炎や口腔乾燥のほか、ビタミンB12欠乏症や貧血なども考えられます。ビタミンB12が不足すると、舌の灼熱感や貧血に加え、手足のしびれなどの神経症状が現れることがあります。こうした症状が続く場合は、内科で血液検査を含めた評価を受けることが大切です。
【症状を比較】扁桃炎・舌咽神経痛・中咽頭がんを見分けるポイント
舌の付け根の痛みには、似た症状を示す病気が複数あります。以下の表は、受診先を考える際の目安です。表に当てはまるからといって、自己判断で病気を確定することはできません。
| 原因・病気 | 主な症状の特徴 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| アフタ性口内炎 | 白っぽい円形の潰瘍、周囲の赤み、食事でしみる痛み | 1〜2週間で改善しない場合や、再発を繰り返す場合 |
| カタル性口内炎 | 粘膜の赤み、腫れ、擦れや刺激による痛み | 刺激を取り除いても改善しない場合 |
| ウイルス性口内炎 | 水疱や複数の潰瘍、強い痛み、発熱を伴う場合がある | 痛みが強い、発熱がある、水分が取れない場合 |
| 扁桃炎 | 喉の痛み、飲み込むときの痛み、発熱、扁桃の腫れ | 発熱や強い嚥下痛がある場合は早めに耳鼻咽喉科へ |
| 舌咽神経痛 | 舌の奥や喉から耳にかけて、短時間の鋭い痛みが繰り返される | 繰り返す鋭い痛みは耳鼻咽喉科などで相談し、必要に応じて脳神経内科・脳神経外科へ |
| ビタミンB12欠乏症・貧血 | 舌のヒリヒリ感、疲労、息切れ、手足のしびれなど | 内科で血液検査などを相談する |
| 中咽頭がんなど | 続く喉の違和感や痛み、嚥下困難、耳の痛み、首のしこり、出血など | 症状が持続する場合は早めに耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ |
扁桃炎は、ウイルスや細菌の感染によって扁桃が炎症を起こす病気です。順天堂大学医学部附属順天堂医院の解説によると、発熱、喉の痛み、首のリンパ節の腫れなどが見られ、重症化すると飲食が難しくなることもあります。細菌性かウイルス性かによって治療方針が異なるため、抗菌薬を自己判断で使用するのは避けてください。
中咽頭がんについては、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が、初期には自覚症状がないこともあると説明しています。症状として、飲み込むときの違和感、治まらない咽頭痛、喉からの出血、口を大きく開けにくい、舌を動かしにくい、耳の痛み、口の奥や首のしこり、声の変化などが挙げられています。
日本頭頸部外科学会も、喉の違和感や痛み、飲み込みにくさ、首のしこりなどが2週間以上続く場合は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診するよう勧めています。症状があるからといって、がんだと決まるわけではありません。しかし、長引く症状を「口内炎だろう」と決めつけて放置しないことが大切です。
【自宅でできる対処法】ベロの根元が痛いときに避けたいこと
痛みが軽く、発熱や腫れなどの強い症状がなく、口内炎や刺激による傷が疑われる場合は、患部を刺激しない生活を心がけましょう。
- 口腔内を清潔に保つ:柔らかめの歯ブラシを使い、痛む場所を強くこすらず、無理のない範囲で歯磨きやうがいを行う。
- 刺激の強い食事を避ける:辛い食品、酸味の強い食品、熱すぎる飲食物、硬く尖った食品などは、痛みが落ち着くまで控える。
- 水分と休息を確保する:飲める範囲で水分を取り、十分な睡眠を確保する。痛みが強く水分を取れない場合は、自宅での経過観察を続けない。
- 患部をいじらない:指や爪、歯ブラシなどで潰瘍を触ったり、無理にこすったりしない。
- 市販薬は症状に合ったものを選ぶ:一般的な口内炎向けの薬でも、原因が感染症や別の病気であれば適切でないことがある。説明書を確認し、迷ったら薬剤師や医師に相談する。
ビタミン不足が心配だからといって、サプリメントを大量に飲めば痛みが治るわけではありません。ビタミンB12欠乏症の診断には血液検査などが必要で、欠乏の原因によって対応も異なります。特に手足のしびれ、強い疲労感、息切れなどを伴う場合は、自己判断で栄養補助食品だけに頼らず、医療機関で相談してください。
また、インターネット上で紹介される民間療法や、刺激の強い液体を患部に直接塗る方法は避けましょう。粘膜をさらに傷つけ、痛みを悪化させるおそれがあります。
【何科を受診する?】受診の目安と緊急性の高い症状
ベロの根元が痛いときは、症状の中心が舌にあるのか、喉にあるのか、全身症状を伴うのかによって受診先を考えます。迷った場合は、耳鼻咽喉科または歯科・口腔外科の受診が選択肢になります。
- 耳鼻咽喉科:飲み込むと喉の奥が痛む、扁桃が腫れている、発熱がある、耳まで痛みが響く、喉の違和感が続く場合。
- 歯科・口腔外科:舌に潰瘍やできものがある、歯や義歯が当たって痛む、口内炎を繰り返す、舌の傷やしこりが気になる場合。
- 内科:舌のヒリヒリ感に加えて、疲労、息切れ、顔色の悪さ、手足のしびれなどがあり、貧血や栄養不足が疑われる場合。
- 脳神経内科・脳神経外科:舌の奥から喉、耳にかけて鋭い痛みが繰り返され、舌咽神経痛などの神経疾患が疑われる場合。まず耳鼻咽喉科で相談してもよい。
メディカルドックの「舌の付け根が痛い」に関する解説でも、歯科医院または耳鼻咽喉科を受診先の候補として挙げ、必要に応じて内科や脳神経内科などでの検査につなげる考え方を示しています。最初から専門診療科を一つに絞り込めなくても、受診を先延ばしにする必要はありません。
次の症状がある場合は、緊急性を優先してください。
- 息苦しい、呼吸がしにくい、急速に舌や喉が腫れている。
- 唾液も飲み込めず、よだれが出るほど飲み込みが困難。
- 強い喉の痛みや腫れによって、水分をほとんど取れない。
- 舌や喉の腫れが急激に悪化している。
呼吸困難や唾液も飲み込めない状態は、気道の問題や重い感染症などが関係している可能性があります。こうした場合は通常の外来予約を待たず、救急受診を検討してください。呼吸が苦しい場合は119番への通報が必要です。
一方、緊急症状がなくても、潰瘍や痛みが2週間以上続く、硬いしこりがある、出血する、首のしこりや耳の痛みを伴う、症状が徐々に悪化するといった場合は、早めに診察を受けましょう。自然に治るかどうかを見極めることより、治療が必要な原因を見逃さないことが大切です。
【ベロの根元が痛い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ベロの根元が痛い場合、自然に治ることはありますか?
A1:軽い粘膜の傷や一般的な口内炎であれば、刺激を避けて過ごすことで1〜2週間程度で改善することがあります。ただし、痛みが強い、発熱がある、症状が悪化する、2週間以上治らない場合は受診してください。
Q2:舌の付け根が片側だけ痛いのは、舌咽神経痛ですか?
A2:片側の痛みだけで舌咽神経痛と判断することはできません。片側の扁桃炎や粘膜の傷なども原因になります。短時間の鋭い痛みが飲み込みや会話で繰り返し起こり、耳まで響く場合は、医療機関で原因を確認してもらいましょう。
Q3:ベロの根元が痛く、飲み込むとさらに痛む場合は何科ですか?
A3:喉の奥の痛み、発熱、扁桃の腫れなどがある場合は、耳鼻咽喉科が適しています。舌に潰瘍やできものがある場合は、歯科・口腔外科も候補です。息苦しさや唾液も飲み込めない症状がある場合は、救急受診を検討してください。
まとめ:【プロの結論】痛みの場所よりも経過と危険サインを重視する
ベロの根元が痛い原因は、口内炎や粘膜の傷、扁桃炎、舌咽神経痛、栄養不足など多岐にわたります。痛む場所やヒリヒリ感、飲み込むときの痛みは原因を考える手がかりになりますが、症状だけで病気を確定することはできません。
判断の要点は、痛みが始まった時期、痛み方、発熱の有無、飲食への影響、しこりや出血の有無です。軽い口内炎は自然に改善することがありますが、2週間以上続く症状や、首のしこり、耳の痛み、舌の動かしにくさなどがある場合は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科や歯科・口腔外科で確認してもらいましょう。
また、舌のヒリヒリ感と手足のしびれ、疲労感などが重なる場合は、ビタミンB12欠乏症や貧血など、口の中だけでは説明できない原因も考えられます。必要に応じて内科で検査を受けることが大切です。
最も避けたいのは、「口内炎だから大丈夫」「片側だけだから神経痛に違いない」と自己判断して、受診の機会を逃すことです。呼吸や飲み込みに異常がある場合は緊急性を優先し、症状が長引く場合は早めに専門医へ相談してください。痛みの原因を正しく確認することが、適切な治療と安心につながります。